WISC(ウィスク)検査とは?結果の見方やデメリットについて解説
子どもの発達に関して、学校の先生や専門家から知能検査を勧められたことはありませんか?
子どもの発達や学習の遅れが気になるとき、客観的な指標として役立つのがWISC検査です。
検査を受けることで、子どもの「得意なこと」と「苦手なこと」が明確になります。
本記事では、WISC検査の概要から検査結果の見方、費用やメリット・デメリットを解説します。
お子さまの健やかな成長のために、ぜひお役立てください。
目次
WISC検査の概要と分かること
WISC検査は、子どもの知的能力を多角的に測定し、その子の得意なことや苦手なことを明らかにするためのツールです。
単にIQを測るだけでなく、認知機能のバランスを知ることで、日常生活や学習面での困り事の背景を理解するのに役立ちます。
WISC検査の特徴や対象年齢、最新版と旧版の違いを4つ解説します。
- 世界で広く使われている児童用知能検査である
- 全体的な知能と指標ごとの特性が分かる
- 対象年齢は5歳0ヶ月から16歳11ヶ月まで
- 最新版WISC-Vと旧版WISC-IVの違いを理解する
それぞれの検査の全体像をつかみましょう。
世界で広く使われている児童用知能検査である
WISC(ウィスク)検査は、デビッド・ウェクスラーによって考案された児童向けの知能検査です。
世界中の教育機関や医療機関で広く採用されており、子どもの知能検査としてもっともポピュラーなものの1つといえます。
日本でも、発達障害の診断補助や、教育的な支援計画の作成において頻繁に活用されています。
この検査は、単に「頭がよいかどうか」を判定するものではありません。
子どもが情報をどのように処理し、どのように問題を解決しようとするのかという、認知のプロセスに焦点を当てています。
全体的な知能と指標ごとの特性が分かる
WISC検査を受けると、全検査IQという総合的な知能指数に加えて、いくつかの指標ごと(最新版では5つ)の得点が分かります。
これらは言語能力や視覚的な情報処理能力、記憶力と処理スピードなど、異なる側面の知能を表しています。
たとえば、言葉で説明するのは得意だけれど、図形を見て考えるのは苦手といった、子どもの内部にある能力のばらつきが可視化されるものです。
この「ばらつき」こそが、その子らしさや、日常生活での困り感の正体であることも少なくありません。
検査結果を通して、これまで「やる気がない」「努力不足」と思われていた行動が、実は認知特性によるものであると気づくきっかけになります。
対象年齢は5歳0ヶ月から16歳11ヶ月まで
現在主流となっているWISC-IV及び最新版のWISC-Vでは、5歳0ヶ月から16歳11ヶ月までの子どもが対象です。
対象年齢から外れる場合は、幼児向けのWPPSI(ウィプシー)や成人向けのWAIS(ウェイス)など、別の種類のウェクスラー式検査を選択することになります。
年齢に合った適切な検査を受けることで、より正確な結果が得られ、その後の支援にもつながりやすくなります。
>>関連記事「WAISとは?検査内容や費用から結果の生かし方まで解説」はこちら
最新版WISC-Vと旧版WISC-IVの違いを理解する
WISC検査は、時代の変化や研究の進歩に合わせて改訂が行われており、現在は第4版から第5版への移行期にあります。
WISC-IVでは4つの指標でしたが、WISC-Vでは「流動性推理」と「視覚空間」が独立し、5つの主要指標で評価されるようになりました。
ワーキングメモリの検査に「視覚的な情報」を扱う課題が追加されたことも大きな変化です。
これらにより、子どもの認知能力をより多角的かつ細かく分析できるようになっています。
検査用具にタブレット端末が導入されるなど、子どもが興味を持って取り組みやすい工夫も凝らされています。
【WISC-V】5つの主要指標が表す能力の詳細
最新版であるWISC-Vでは、子どもの認知機能を以下5つの主要指標に分けて評価します。
- 言葉の概念化や知識を測る言語理解
- 視覚情報の分析や統合を測る視覚空間
- 新しい情報への応用力を測る流動性推理
- 聴覚・視覚情報の記憶や処理能力を測るワーキングメモリ
- 単純作業の速さと正確さを測る処理速度
詳しく見ていきましょう。
言葉の概念化や知識を測る言語理解
言語理解指標(VCI)は、言葉を使って物事を理解し、表現する能力を測定する指標です。
具体的には、言葉の意味を知っているか、言葉同士の関係性を理解できているか、自分の知識を言葉で適切に説明できるかといった力が問われます。
この指標が高いお子さまは、語彙が豊富で先生の話を理解したり、自分の気持ちを言葉で伝えたりすることが得意な傾向があります。
一方で、この指標が低い場合は、言葉での指示が伝わりにくかったり、自分の考えをうまく言葉にできずにもどかしい思いをしたりすることがあるかもしれません。
学習面では国語の読解力や、授業中の説明理解に影響しやすい能力といえます。
視覚情報の分析や統合を測る視覚空間
視覚空間指標(VSI)は、目から入った視覚的な情報を処理する能力を測るものです。
図形や空間的な位置関係を把握し、それを頭の中で操作したり、実際に手を動かして再現したりする力が求められます。
積み木模様を作る課題などがこれに含まれ、地図を読む、図工で作品を作る、漢字の形を覚えるといった活動に関連しています。
この力が高いと、視覚的なイメージを使って考えることが得意で、図やイラストを使った説明を好む傾向です。
反対に苦手な場合は、図形問題に苦戦したり、物の形や方向を捉えるのが難しかったりすることがあり、視覚的な補助教材の工夫を要することもあります。
新しい情報への応用力を測る流動性推理
流動性推理指標(FRI)は、新しい場面や課題に直面したときに、柔軟に考えて解決策を見出す能力です。
過去に学習した知識をそのまま使うのではなく、その場の情報から規則性や法則を見つけ出し、論理的に推論する力が試されます。
いわゆる「地頭のよさ」や「応用力」に近いイメージで、算数の文章題を解いたり、はじめてのトラブルに対応したりする際に重要です。
この指標が高いお子さまは、未知の課題にも粘り強く取り組み、自分なりに工夫して解決しようとする姿勢が見られます。
低い場合は、予想外の出来事に混乱しやすかったり、応用問題になると手が止まってしまったりすることがあるかもしれません。
聴覚・視覚情報の記憶や処理能力を測るワーキングメモリ
ワーキングメモリ指標(WMI)は、情報を一時的に記憶し、その情報を頭の中で操作しながら処理する能力を指します。
耳で聞いた数字を反対からいったり、計算の途中経過を覚えておいたりするような作業で必要となる力です。
日常生活では、複数の指示を一度に聞いて実行する、会話の内容を覚えておいて返事をする、先生の話を聞きながらメモを取るといった場面で頻繁に使われます。
この力が十分にあると、複雑な指示もスムーズにこなせます。
しかし、弱い場合は「話を聞いていない」と誤解されたり、作業の途中で何をすべきか忘れてしまったりすることも。
指示を短く区切るなどの配慮が、とくに効果的な領域といえるでしょう。
単純作業の速さと正確さを測る処理速度
処理速度指標(PSI)は、簡単な視覚情報を素早く正確に処理するスピードを測定します。
単純な記号を書き写したり、特定のマークを探し出したりする課題を通して、目と手を連動させて作業する効率性を評価します。
この指標は、板書のスピードやテストを時間内に解き終える力、宿題をテキパキと終わらせる力などに直結するものです。
処理速度が高いお子さまは、作業の飲み込みが早く、効率よく物事を進められますが、低い場合はどうしても作業に時間がかかってしまいます。
本人のやる気とは無関係に時間がかかるため、急かさずに十分な時間を確保してあげることが、自信を守るために大切です。
検査結果の数値とIQの正しい見方
検査結果が手元に届くと、どうしてもIQの数値だけに目がいきがちです。
しかし、数値の意味を正しく理解し、全体的なバランスを見ることが肝心です。
検査結果を読み解くための基本的な知識について、以下の4つを解説します。
- 平均値100としての数値の分布と意味
- 総合的な知的能力を示す全検査IQ
- 指標間のばらつき(ディスクレパンシー)
- 発達障害やグレーゾーンの診断における位置づけ
数値を一喜一憂の材料にするのではなく、お子さまの支援計画を作るための客観的なデータとして活用しましょう。
平均値100としての数値の分布と意味
WISC検査のIQや指標得点は、同年齢の集団の中でどのくらいの位置にいるかを示す「相対評価」の数値です。
一般的に、IQ70から130の間に全体の約95%の人が収まるとされています。
その中で、検査結果の分類(記述分類)において「平均」とされるのは、90から109の間です。
統計的には85から115の間であれば、おおむね平均的な知能の水準にあると考えられています。
数値が高いからといって人間的に優れているわけでも、低いからといって劣っているわけでもありません。
あくまで、特定の課題におけるパフォーマンスが、同年代の平均と比べてどの程度かを表しているに過ぎないものです。
総合的な知的能力を示す全検査IQ
全検査IQ(FSIQ)は、検査全体の成績を総合して算出される数値で、子どもの全体的な知的水準を表します。
一般的にイメージされる「IQ」にもっとも近いもので、知的発達の程度を判断する1つの目安として使われます。
しかし、全検査IQだけで子どものすべてを語れません。
たとえ全検査IQが平均的な値であっても、指標ごとの得点に大きな差がある場合、子どもは強い生きづらさを感じている可能性があります。
全検査IQは、あくまで全体像を大まかに把握するための指標の1つと捉えておきましょう。
指標間のばらつき(ディスクレパンシー)
検査結果を見るうえでもっとも注目すべきなのが、指標間の得点の差(ディスクレパンシー)です。
たとえば、言語理解が120で処理速度が80だった場合、理解する力は高いのに、それをアウトプットするスピードが追いつかないという状態になります。
このギャップが大きいと、本人は「分かっているのにできない」というフラストレーションを抱えやすくなります。
周囲からは「サボっている」と誤解される原因にもなりかねません。
指標間の差が大きい場合は、高い能力を使って低い能力を補うような工夫を考えることが大切です。
発達障害やグレーゾーンの診断における位置づけ
WISC検査の結果は、発達障害やグレーゾーンの診断において貴重な参考資料となりますが、それだけで診断が確定するわけではありません。
医師はWISCの結果に加え、問診や行動観察、成育歴などを総合的に判断して診断を行います。
ただし、特定の指標が極端に低い、あるいは指標間の差が大きいといった特徴は、発達障害の特性と関連していることが多くあります。
いわゆる「グレーゾーン」と呼ばれる場合も、この検査結果をもとに、どのような配慮が必要かを検討することが可能です。
診断名の有無に関わらず、検査結果から得られる特性の情報を、日々の生活や学習支援に生かしていく視点が大切です。
WISC検査を受ける際のデメリットと注意点
WISC検査は有益な情報をもたらしてくれますが、受検には以下のようなデメリットや注意点も存在します。
- 検査自体が子どもにとって負担になる場合がある
- 結果の数値だけにとらわれてしまうリスクがある
- 負担や目的の観点から頻繁に受けるものではない
安易に受けるのではなく、子どもへの影響や受検の目的を考慮しなければいけません。
検査自体が子どもにとって負担になる場合がある
WISC検査は、1時間から1時間半、場合によってはそれ以上の時間をかけて行われます。
慣れない場所で、初対面の検査者と一対一で課題に取り組むことは、子どもにとって大きな精神的・身体的負担となり得ます。
とくに集中力が続きにくい子や、人見知りが強い子にとっては、検査そのものが強いストレスになる可能性も否定できません。
「テストされる」というプレッシャーから、失敗をおそれて委縮してしまう子もいます。
無理に受けさせるのではなく、子どものコンディションや気持ちを十分に配慮し、安心して受けられる環境を整えることが大切です。
結果の数値だけにとらわれてしまうリスクがある
検査結果として示される数値は、分かりやすい指標ですが、それゆえに数値だけが1人歩きしてしまうリスクがあります。
「IQが低いからこの子はダメだ」「数値が悪いから将来が心配だ」といったネガティブなレッテル貼りにつながってしまうことは避けなければなりません。
数値はあくまで、ある一時点での検査結果であり、子どもの可能性のすべてを決めるものではないからです。
数値が高い部分にばかり注目して過度な期待をかけたり、低い部分を無理に訓練して引き上げようとしたりすることも、子どもを追い詰める原因になります。
数値は子どもの理解を深めるための「手がかり」であり、評価するための「成績表」ではないことを肝に銘じておく必要があります。
負担や目的の観点から頻繁に受けるものではない
WISC検査は、一度受けると、次の検査まで一定の期間(通常は1年以上など)を空ける必要があります。
これは、検査内容を覚えてしまうことによる練習効果(学習効果)を防ぎ、正確な結果を得るためです。
また、頻繁な検査は子どもにとって過度な負担となるため、むやみに繰り返すことは推奨されません。
検査を受けること自体を目的にせず、検査後の支援をどうするかに重きを置いて、受検のタイミングは必ず検査実施機関や専門家に相談しましょう。
WISC検査に関するよくある質問
WISCの受検を迷っている方や、結果を受け取って不安を感じている方は、以下の内容を参考にしてください。
- 大人でも受けられるか
- 検査結果は変わることがあるか
- 何度も受けてよいか
これらの疑問を解消し、安心して検査に向き合えるようにしましょう。
大人でも受けられるか
WISC検査は原則として16歳11ヶ月までの子どもを対象としているため、大人は受けられません。
16歳以上の方が知能検査を受ける場合は、成人用の知能検査である「WAIS(ウェイス)」が適用されます。
WAISもWISCと同様にウェクスラー式の知能検査であり、全検査IQや指標別の得点が分かります。
自分の特性を知りたいと考える成人の場合は、医療機関や専門機関でWAISの受検を相談してみるとよいでしょう。
検査結果は変わることがあるか
検査結果の数値は、子どもの成長や環境の変化、受検時の体調などによって変動することがあります。
IQは絶対不変の能力値ではなく、その時点でのパフォーマンスを表すものだからです。
適切な支援や学習環境によって、苦手だった部分が伸びたり、得意な部分がさらに強化されたりすることは珍しくありません。
一度の結果を固定的なものと捉えず、変化の可能性を含んだものとして受け止める柔軟な姿勢が大切です。
何度も受けてよいか
WISC検査は練習効果を避けるため、一般的には前回の検査から1年以上、望ましくは2年以上の間隔を空けることが推奨されています。
頻繁に受けても正確な測定ができないばかりか、子どもへの負担も大きくなってしまいます。
再検査を検討する場合は、進学や就職などに合わせて支援内容を見直したいときや、前回の結果と現状に大きな乖離を感じるときなどが適切です。
専門家と相談しながら、本当に検査が必要な時期を見極めて実施することが、子どもにとってもっとも有益な活用法です。
まとめ:WISCとは子どもの認知特性を理解するための検査
WISC検査は、お子さまの得意や苦手を客観的な数値で把握し、個性に合った適切な支援につなげるための重要なツールです。
しかし、検査結果をどのように解釈し、日々の生活にどう生かせばよいのか、悩まれる保護者の方も少なくありません。
赤羽すずらんメンタルクリニックでは、患者さまのお悩みやご希望に寄り添い、一人ひとりの状況に合わせたオーダーメイドの治療を提案しています。
心療内科や精神科がはじめての方でも気軽に相談できる「話しやすい空間」を目指しております。
お子さまの発達や特性についてご不安があれば、ぜひ当院へご相談ください。
監修者
