産後うつはいつまで続く?原因や対策を解説
産後うつになる原因はさまざまですが、出産を終えた女性であれば、誰もが抱える悩みは同じです。産後うつは、軽いストレスとは異なり、深刻な精神疾患のひとつです。
産後うつは、症状が改善しないと自分を否定したり、赤ちゃんへの愛情が薄れたり、幸せと思えない状態が続き、命にかかわる危険性もあります。
産後、何かがおかしいなと気が付いたら、受診・治療をおすすめします。
本記事では、産後うつの原因と対策について解説します。
目次
1.産後うつとは2.産後うつはいつまで続く?
3.産後うつになる原因
4.産後うつになりやすい人の特徴
5.産後うつの対策
6.産後うつに気づいたら早めの診療をおすすめします
産後うつとは
産後うつとは、出産後に起こる心の病気です。特に、今までにうつ病にかかったことのある人は、産後うつになりやすい傾向にあります。産後うつの主な症状として、気持ちが沈んだり、自分を責めたり、精神が不安定な状態になり食欲が低下して睡眠も浅くなることなどが挙げられます。
産後うつになるのは、妊娠中から起きているエピソードが関係していることが多く、それをきっかけに産後1~2週目から症状が始まります。
女性は男性の2倍うつ病にかかりやすく、12人に1人が一生のうち一度はうつ病に陥りやすいといわれています。そして、そのなかでも特にホルモンバランスや生活環境などが大きく変化する妊娠中・産後はうつ病が起こりやすいです(厚生労働省:e-ヘルスネットより)。
産後うつの治療法は、自然治癒では改善されません。そのため、専門医による診断・治療が必要になります。
以下は、イギリスの精神科医によって考案されたうつ病の10項目の質問表です。産後うつのセルフチェックとして、ご活用ください。
※ 「エジンバラ産後うつ問診票(Edinburgh Postnatal Depression Scale)」
- 笑うことができたし、物事の面白い面もわかった。
- 物事を楽しみにして待った。
- 物事がうまくいかなった時、自分を不必要に責めた。
- はっきりとした理由もないのに不安になったり、心配したりした。
- はっきりとした理由もないのに恐怖に襲われた。
- することがたくさんあって大変だった。
- 不幸せな気分なので、眠りにくかった。
- 悲しくなったり、惨めになったりした。
- 不幸せな気分だったので、泣いていた。
- 自分自身を傷つけるという考えが浮かんできた。
マタニティブルーとの違い
産後うつと間違えられやすいのが「マタニティブルー」です。マタニティブルーとは、妊娠中や出産後に起こる情緒不安定な状態のことで、女性ホルモンの急激な減少と妊娠・出産の疲労感、子育ての不安、寝不足、プレッシャーなどが原因で起こります。
マタニティブルーと産後うつは、症状が似ているため判断が難しくなります。マタニティーブルーは一過性の精神的ストレスによる症状で、産後1〜2週程度で自然に改善されることが多いです。もし、それ以上の期間で気分の落ち込みが続く場合は、産後うつの可能性が高くなります。
産後うつは、専門医の治療が必要となる病気です。長期的に心の状態が落ち着かない場合は、一度専門医に相談することをおすすめします。
産後うつはいつまで続く?
産後うつは、早い人で産後1〜2週間くらいから症状が出始める人もいれば、産後3か月〜6か月経ってから発症する人もいるなど、人によって発症する時期はさまざまです。
マタニティブルーの場合は、先述した通り1〜2週間適度で解消するケースが多いですが、産後うつは、症状が2週間以上続く人が大半です。症状に早く気が付いて専門医の診断を受けた場合、2〜3か月程度で回復する傾向です。治療を受けていない状態が続くと、1年以上経っても回復しないという人もいます。
産後うつになる原因
では、なぜ産後うつになるのでしょうか。その原因をいくつかご紹介します。
女性ホルモンの変化
妊娠中や出産に伴う女性ホルモンの大きな変化は、脳がストレスに耐える抵抗力を低下させ、ストレスが処理しきれなくなると情緒不安定な状態が起こります。
妊娠中の女性の体内には、エストロゲンやプロゲステロンが増加し、出産後は、女性ホルモンの分泌量が急激に減少するため、これらの変化に対してカラダが着いていけずに自律神経が乱れてうつ状態になります。
女性ホルモンのバランスが崩れると、感情の起伏が激しくなり、出産後の育児や将来に対するプレッシャーによって悪循環が出始めるようになります。特に、周りに相談する人がいない場合は一人で悩みを抱え込んでしまい、なかなか症状が回復しづらくなります。
睡眠不足や育児による疲労
出産後、授乳が始まると睡眠時間が不規則になります。おむつ交換や赤ちゃんの寝かしつけなど、親としての役目にこだわってすべて一人で抱え込んでしまうと、疲労が溜まり、うつ状態に陥りやすくなります。
出産後は、通常時よりも体力を消耗しており、体はひどく疲れているはずです。しかし、出産によりアドレナリンが多く分泌されることから興奮状態が続き、「産後ハイ」と呼ばれる状態になり、眠ることが難しくなります。眠れない状態が続くと、思考能力が低下して、感情の起伏が激しくなります。すると、ストレスが過剰に溜まっていきます。
アドレナリンが大量に分泌されると、ストレス反応に大きく影響します。極度の興奮状態を起こす原因となるため、出産後は、適度な息抜きとリラックスできる環境が必要です。
プレッシャーやストレス
産後に、多くの物事を考えすぎストレスを溜めてしまい、うつ状態になる場合があります。
慣れない育児への不安や、母親としての責任感を抱えてしまうと、プレッシャーから過剰なストレスが溜まってうつ状態になりやすくなります。
産後うつの症状が進行すると、育児放棄や児童虐待にまで及んでしまうケースや、死に至るケースもあります。うつ状態になっているかもしれない、と少しでも考えられる場合、自分だけで判断せずに、周りの協力や専門的な診断と治療が必要です。
厚生労働省の調査「東京都23区の妊産婦の異常死 年別事例数」のデータによると、 自殺事例(63例)における精神疾患の有無について、妊娠中のうつ病(35%)、躁鬱病、統合失調症 (4%)、産後うつ病(33%)、うつ病(10%)、産後うつ病+統合失調症(3%)、産後統合失調症(5%)という結果が報告されています。
妊娠中や産後に精神疾患にかかるリスクは大きく、精神科と周産期医療等の連携体制のあり方について重要視されています。
産後うつになりやすい人の特徴
産後うつになりやすい人の特徴について確認しておきましょう。
産後うつが発症する背景には、家族関係、夫婦関係、経済的な環境、本人の性格などが影響してきます。
- 完璧主義である
- 真面目で責任感が強い
- 周りに相談できる人がいない
- 家族関係が良くない
- 過去にうつ病にかかったことがある
- 人に頼ることができない
- 家庭環境に問題がある
- 不適切な養育体験がある
- 生活習慣が乱れている
- 経済的な不安がある
産後うつの対策
産後うつは、事前に対策を考えておくことで緩和できる場合もあります。なるべくリラックスした状態で育児ができるように心がけましょう。妊娠・出産そして育児は、母親ひとりで抱える必要はありません。身近な家族や友人、知り合い、医療機関、助産師や保健師、育児相談の専門家など、さまざまな人と連携して子育てをするように、普段から気さくな人間関係を築くことも大切です。
1人の時間を設ける
産後うつかなと感じたら、まずは一人の時間を作ることです。赤ちゃんの面倒を家族に託して外出するだけでも気持ちが楽になるでしょう。
一人の時間を作るということは、育児や家事から離れてゆっくりするという意味にもなります。外出が難しい場合は、赤ちゃんと一緒に寝てしまうのも良いでしょう。睡眠を取ることで、自律神経のバランスを取り戻すことができて、冷静な状態で育児に関わることができます。子育てや家事を抱えて周りのプレッシャーを感じたら、いったん一人になって自分自身に戻ることが大切です。
完璧にこなそうとしない
子どものために必死になりすぎないように、家事や育児をほどほどで済ませることを心がけましょう。完璧にしようとしても一人の母親ができる仕事の量には限度があります。あれもこれも考えないで、ゆっくり育児を楽しめるような心のゆとりと周りの環境を整えるようにしましょう。
育児は長期戦です。子どもが成長するまでに思いがけないハプニングも起きるでしょう。
そのたびにうつになっていては子どもは育ちません。完璧でなくてもいいから、穏やかで笑って対話できるお母さんであった方が子どもは自然に成長するので大丈夫です。
産後うつに気づいたら早めの診療をおすすめします
妊娠・出産は、女性のからだが目まぐるしく変化する時期です。からだの変化と一緒に心の状態も不安定になりやすく、産後うつになる人も多くいらっしゃいます。
産後うつは、精神疾患になるため、自分で判断せずに専門医の診断を受けて適切な治療を受けることをおすすめします。
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