「寝すぎ」はどこからが睡眠障害?対策方法を解説
「寝つきが悪い」「十分に睡眠がとれない」などの不眠症以外にも、寝すぎの状態、いわゆる過眠症も睡眠障害の一つとしてあげられます。ただ「寝すぎ」と言っても、どこからが睡眠障害にあたるのか、気になる方もいらっしゃるでしょう。
この記事では、「寝すぎ」はどこからが睡眠障害になるのかを解説したのち、「寝すぎ」の症状が現れる病気やその対策についてもご紹介します。
目次
1.「寝すぎ」はどこからが睡眠障害?2.「寝すぎ」の症状が現れる病気
3.「寝すぎ」が及ぼす影響
4.「寝すぎ」の対策方法
5.一般的な睡眠時間は7~9時間だが、必要な睡眠時間は人それぞれで異なる
「寝すぎ」はどこからが睡眠障害?
体が健康なときでも、必要以上に睡眠を長くとってしまう状態を「寝すぎ」と言います。「寝すぎ」には睡眠時間などの明確な定義はありません。体の状態や年齢、体質によって人それぞれ必要な睡眠時間が異なります。
2015年に米国睡眠財団が報告した内容によると、心身の健康を維持するうえで18〜64歳の方に推奨される睡眠時間は7〜9時間となっており、睡眠時間の一つの目安になるでしょう。
「寝すぎ」の症状が現れる病気
「寝すぎ」になっていても、原因が体の疲れや睡眠不足など一時的な症状である場合もあるでしょう。しかし、もしかすると病気の症状の一つとして、「寝すぎ」になっている可能性も考えられます。
ここからは、「寝すぎ」の症状が現れる病気をご紹介します。
ナルコレプシー
「寝すぎ」の症状が現れる代表的な病気として、ナルコレプシーがあげられます。
ナルコレプシーが起きる原因は、脳内の覚醒維持に必要なオレキシン神経の減少や消失です。オレキシン神経が減少したり消失したりすると、起きている状態が保てなくなり、授業中や仕事中など起きていなければならないときでも異常な眠気に襲われて、居眠りをしてしまいます。
また、笑ったときや怒ったときなど感情に変化があると、全身の力が抜ける「情動性脱力発作」を起こすこともあります。
特発性過眠症
睡眠不足ではないにもかかわらず、日中にも強い眠気があり生活に支障をきたす病気が「特発性過眠症」です。原因は解明されておらず、睡眠や覚醒に関する遺伝的要因によるものと考えられています。
先述した「ナルコレプシー」で見られるような情動性脱力発作や金縛り、入眠時の幻覚はそれほど見られません。
また、「ナルコレプシー」では昼寝をすると短時間の眠りで一時的に眠気が回復する一方、「特発性過眠症」の中で睡眠時間が長い人の場合、一度寝てしまうと長い睡眠時間を必要とします。
反復性過眠症
反復性過眠症は、クライン-レヴィン症候群(Kleine-Levin Syndrome)とも呼ばれるとても珍しい病気で、100万人に1~2人の発症率と言われています。一日の大半を眠って過ごす過眠期と呼ばれる期間があり、期間中は通常の生活を送るのが困難になりますが、この期間を過ぎると心身ともに大きな異常は見られません。
過眠期には、1日16~20時間の長時間睡眠や食事量の変化、普段食べないものを好むようになるなどの症状が見られます。過眠期は通常10日程度つづきますが、長ければ数週間に及ぶこともあります。年間に数回の過眠期が見られるのが一般的です。
心の病気
うつ病や双極性障害、季節性感情障害など精神疾患にかかると、「寝すぎ」の症状を訴える方がいらっしゃいます。心身ともにストレスがかかり、脳がうまく働かなくなると、気分が落ち込んだり、食欲が変化したりします。
また、うつ病の治療薬(抗うつ剤や抗不安剤など)が眠気を引き起こしている場合もあります。薬の副作用として、眠気を生じてしまい「寝すぎ」になっている可能性もあるでしょう。
「寝すぎ」が及ぼす影響
「寝すぎ」の状態がつづくと、体にどういった影響が出るのか気になる方もいらっしゃるでしょう。ここからは、「寝すぎ」が体に及ぼす影響について解説します。
頭痛や筋肉痛の発生
長時間眠ると、頭痛や筋肉痛を引き起こす場合があります。
寝過ぎによって生じる頭痛の一つが片頭痛です。一般的に睡眠中は血管が拡張しており、起床すると体が血液を送ろうと血管の拍動が強まります。すると、血管周りの三叉神経が刺激されて片頭痛が引き起こされます。
また、長時間同じ姿勢で寝ていると、首や肩に負担がかかったり筋肉の血行不良が生じたりします。その結果、肩や腰、首の筋肉痛や頭痛が生じることもあるでしょう。
認知機能の低下
「寝すぎ」の習慣によって引き起こされるのが、認知機能の低下です。
通常、睡眠は「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」が交互に現れますが、適切な睡眠時間では前半にノンレム睡眠が多く、後半にレム睡眠が多く見られます。
しかし、寝すぎるとレム睡眠が過剰に増え、ノンレム睡眠とレム睡眠のバランスが崩れます。ノンレム睡眠中は体と脳が深く休める一方、レム睡眠中の脳は非常に活発です。そのため、レム睡眠が増えすぎると脳が十分に休息できず、認知機能の低下につながる恐れがあります。
さらに、長時間横になることで体の血流が悪化し、脳に十分な酸素と栄養が行き渡りにくくなります。その結果、脳の機能が低下し、集中力や記憶力、判断力などの認知機能が落ちる可能性があるでしょう。
体重の増加
長時間の睡眠は体重増加と関連しています。
とある疫学調査によると、睡眠時間が5~6時間と短い人と9~10時間以上の長時間の睡眠をとる人は、将来的に体重が増えやすい傾向があることが報告されています。
その一因として、長時間の睡眠が運動不足を招くことが考えられるでしょう。睡眠時間が長いと日中に活動する時間が短くなり、カロリー消費があまりできず、その結果体重が増えやすくなります。
心臓病の発症リスクの増加
9時間以上の睡眠を取っている場合、心筋梗塞や狭心症などの心臓病や高血圧、脳梗塞による死亡リスクが高まることが報告されています。令和2年に行われた調査によると、日本における死因として、心不全などの心疾患が悪性新生物(がん)に次いで2位となっています。心不全は、一度発症すると入退院を繰り返しながら徐々に症状が悪化し、命にもかかわる恐ろしい病気です。
「寝すぎ」の対策方法
「寝すぎ」の対策方法は、睡眠の質を高めることが重要です。「寝すぎ」に悩みを抱えている方は、まずは自身の生活習慣を見直しましょう。ここからは、「寝すぎ」の対策方法について解説します。
推奨されている睡眠時間にこだわらない
一般的に推奨される睡眠時間は7~9時間と言われていますが、人によって、睡眠時間が長かったり、短かったりとさまざまです。年齢や体質によって、必要な睡眠時間は異なります。睡眠時間にこだわりすぎないようにしましょう。
カフェインや喫煙を控える
カフェインの摂取や喫煙は夜の睡眠に悪影響を及ぼす可能性があるため、就寝前には控えることが大切です。
カフェインは寝付きを悪化させ、睡眠効率が低下します。また、タバコに含まれるニコチンも、寝付くまでの時間が長くなったり、深い睡眠が減ったりして、睡眠の質を悪化させます。
寝る4時間前からはカフェインの摂取を、1時間前からは喫煙を控えるようにしましょう。
就寝時間にこだわらない
就寝時間にこだわりすぎると、眠ろうとしても眠れないときに頭がさえてしまい、さらに寝つきを悪くします。眠たくなってからベッドに入るようにして、眠れないからといって焦らないようにしましょう。
目覚めたら日光を浴びる
朝に日光を浴びると、体内時計が整えられ日中の覚醒維持につながります。また体内でメラトニンと呼ばれるホルモンの分泌がリセットされ、その14~16時間後に睡眠を促します。朝に日光を浴びて、夜にメラトニンが分泌される状態にしておくことで、夜に自然と眠りにつけるようになり睡眠の質が良くなるでしょう。
規則的な食事と運動を習慣づける
1日3回の食事や適度な運動など規則的な生活習慣を身に付けることも、睡眠の質を高め「寝すぎ」を解消するために有効です。
とくに朝食は一日のはじまりのスイッチです。朝食をとりエネルギー源となるブドウ糖を補給して、心と体を目覚めさせましょう。
また、日中の適度な運動が、夜の心地よい睡眠へつながります。国内外で行われた疫学研究において運動習慣がある方には不眠が少なく、睡眠の維持と運動習慣には深い関係があることが分かっています。1回限りの運動をするのではなく、日ごろから運動を行い体を動かす習慣を身に付けましょう。
一般的な睡眠時間は7~9時間だが、必要な睡眠時間は人それぞれで異なる
2015年の米国睡眠財団からの報告によると、心身の健康を維持するために推奨される睡眠時間は7~9時間とされています。しかし、体の状態や年齢、体質によって人それぞれ必要な睡眠時間が異なるため、「寝すぎ」の明確な定義はありません。
「寝すぎ」を解消するために、睡眠の質を高める生活習慣を身に付けましょう。
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