痛みにTMS治療は効果がある?エビデンスとともに解説
TMS治療は脳を刺激して効果が期待できる最先端の治療です。カラダの痛みに対する鎮痛効果も臨床研究の症例数があり、慢性疼痛で苦しまれている方にとって可能性のある治療法です。
本記事では、TMS治療で痛みの軽減効果があるのか、エビデンス、TMS治療が適している場合について解説します。
目次
1.TMS治療とは2.痛みにTMS治療は効果がある?
3.TMS治療のエビデンス
4.TMS治療が適している方
5.TMS治療で痛みの緩和が期待できる
TMS治療とは
TMS治療は「反復経頭蓋磁気刺激法(repetitive Transcranial Magnetic Stimulation)」の略で、2008年より適応となったアメリカ発の治療方法です。磁気で脳を刺激して神経シナプスの働きを活性化します。神経シナプスとは、神経細胞と神経細胞のつなぎ目で、外部からの情報を次の神経細胞へ伝達する役割を担う接合部分です。シナプスを磁気刺激で施術をすることで、痛みやその他の症状を緩和することが期待できます。
特殊なコイルに電流を流して、磁場を発生させることで、脳内に誘導電流を引き起こし、局部を刺激します。
日本国内では、2017年に難治性のうつ病におけるTMS治療が保険適用となりました。医療先進国のアメリカよりも9年遅れで、TMS治療の普及が徐々にスタートしています。
また、TMS治療は「疼痛」と「痙性麻痺」の効果に関しても、エビデンスの蓄積が進んでいます。
TMS治療のエビデンスについては、日本国内の研究報告数は、海外と比較してまだ希少であるため、今後の症例数によって高いエビデンスレベルが期待されています。
痛みにTMS治療は効果がある?
TMS治療は、痛みの緩和に効果があると期待されている治療法です。主に「神経因性疼痛」「線維筋痛症」に関しての症例があります。
神経因性疼痛の場合
神経因性疼痛は、身体機能や精神状態に著しい影響を及ぼす慢性疼痛疾患のひとつです。
刺さるようなピリピリとした痛みが発症し、痛みが長引くと血管収縮で痛みの強さが増して慢性化します。この痛みを緩和するために、TMS治療による効果が期待できます。
神経因性疼痛のTMS治療については、痛みとは反対側の一次運動野(M1)の高頻度刺激を行います。神経因性疼痛の研究報告では、鎮痛効果がある基準は、8の字コイルによる一次運動野(M1)、rMT80〜90%も高頻度刺激を10回以上行うと有効性があり、エビデンスレベルAの評価があります。
線維筋痛症(慢性疼痛)の場合
線維筋痛症は、身体の部位の広い範囲に痛みが生じる疾患です。強い痛みに加えて、疲労感や倦怠感、睡眠障害、うつ状態などを伴います。この痛みを緩和するために、TMS治療による効果が期待できます。
線維筋痛症のTMS治療については、左一次運動野(M1)と左背外側前頭前野(DLPFC)に高頻度刺激を行います。この症例についてはエビデンスレベルB評価であるため、より精度の高い症例数が必要になります。
基本的には、うつ病を伴う線維筋痛症の場合に、TMS治療の効果が期待できると言われています。
TMS治療のエビデンス
TMS治療は、慢性疼痛の治療に効果的な研究報告があります。「一次運動野(M1)」領域を高頻度で刺激することで、治療効果が持続されることがエビデンスレベルAの評価で記されています。一次運動野とは、大脳皮質運動野の一つで、運動指令を脳幹や脊髄へ出力する重要な機能です。
近年、一次運動野が痛みの緩和に関わる機能であると研究報告されていることもあり、TMS治療による痛みの治療が、今後の症例数によって有効性が高まることになります。痛みが軽減する効果については、条件として長い治療期間で連続した治療が必要です。
臨床研究の報告では、TMS治療のエビデンスについて以下の結果があります。
症例①
帯状疱疹後神経痛についての報告では、40名の患者を対象にM1高頻度刺激を行った結果、磁気を発しない偽刺激を行った場合を比較すると、痛みが改善されて3か月で平均45〜50%の痛みが減った状態が持続し、治療を受けた半数以上の治療反応が認められています。
症例②
悪性腫瘍についての報告では、30名の患者にM1高頻度刺激を行った結果、磁気を発しない偽刺激を行った場合と比較すると、痛みの緩和が80%以上に反応があり、2週間後に平均35~40%の痛み軽減が認められました。しかし、1か月以上効果は持続していません。
TMS治療が適している方
TMS治療は、けいれんのリスクが高い方や頭部に金属や精密機器がある方以外であれば、施術を受けることが可能です。
人工内耳、ペースメーカー、脳深部刺激装置などを装着している方は、磁場が発生するため治療を行うことが難しくなります。
けいれんしやすい方やてんかん、妊娠、心臓病のある方は、治療について慎重に検討することになります。
また、症状によっては短期集中治療で効果が期待できる場合や、副作用が少なく薬物療法で改善が見られない方に適している治療法です。
短期間での治療を希望する方
TMS治療の治療期間については、短期集中治療を行うことでライフスタイルに合わせて治療計画を立てることができます。
まずは事前にカウンセリングを行い、現在の症状をヒアリングして不明な点などを相談します。初診は心理検査や診察、頭部計測などを行って副作用についても検討します。
再診から、TMS治療をスタートし、1回におよそ20〜40分程度の施術を行います。
治療期間については、症状のレベルによって異なりますので、治療を希望する専門医に相談して治療計画を検討しましょう。
また、TMS治療の治療期間は、効果が持続した場合は、薬物療法よりも短期間で改善するケースもあります。
副作用を軽減したい方
TMS治療は、副作用の少ない治療法です。副作用の症例については、施術後に軽い頭痛、刺激痛、けいれんや不快感、違和感を伴う場合もありますが、数日後には改善するので心配はありません。
頭痛が生じる原因は、頭部の筋収縮が生じるため違和感や痛みを感じるからです。また、TMS治療を初診で行う場合に緊張感や恐怖感によって刺激痛を伴うこともあります。
大半は、数回の施術で刺激痛に慣れるケースが多く、次第に痛みが緩和するようになります。
TMS治療の副作用については、施術前にしっかりカウセリングを行ってから始めるため、納得した上で治療を行います。
薬に対して抵抗がある方
TMS治療は、薬物療法で改善が見られない方や、薬の副作用に抵抗がある方に有効的な治療法です。薬の副作用には、眠気や倦怠感、下痢や便秘、発疹、胃痛など、また服用中の他の薬との相互副作用など、さまざまなリスクがあります。
身体疾患や精神疾患を患っている方の場合、治療が長期化することを踏まえると、薬を使わないTMS治療が適しているケースもあります。
TMS治療で痛みの緩和が期待できる
慢性化した痛みには、TMS治療の施術を行うことができます。特にうつ病を伴う疾患の場合、改善が期待できます。TMS治療のメリットは、薬物療法の副作用のリスクが低く、
患者さんの身体機能への負担が軽減できることです。今までの治療法では改善できなかった方は、TMS治療を一度検討すると良いでしょう。
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