TMS治療の保険診療と自由診療の違いとは?費用や特徴について解説
「TMS治療は保険適用できる?」「TMS治療の保険診療と自由診療の違いは?」「それぞれの特徴や費用を知りたい!」
日本で受けられる医療機関はごくわずかですが、副作用が少ないこともあって近年注目が集まっているTMS治療。
本記事では、そのTMS治療の「保険診療」と「自由診療」の違いや特徴について解説します。
目次
1.TMS治療とは?2.TMS治療の「保険診療」「自由診療」の違いとは?
3.TMS治療を受ける方法は?
4.保険診療のTMS治療
5.保険診療でのTMS治療が普及していない理由
6.自由診療のTMS治療
7.TMS治療の保険適用条件はまだ厳しい
TMS治療とは?
TMS治療とは、頭を傷つけることなく磁気によって脳内の血流や神経を刺激する治療法です。 うつ病だけでなく、精神疾患や発達障害にもその効果が期待できます。こちらの記事で、TMS治療の効果や安全性について解説しています。あわせてぜひご覧ください。 TMS治療とは?効果や安全性について解説
うつ病を放置したら一体どうなる?病気をいち早く見つけるサインとは
TMS治療の「保険診療」「自由診療」の違いとは?
まずは、TMS治療の「保険診療」と「自由診療」の違いから解説していきます。
とはいえ、根本の違いはひとつだけで、それも名称のとおりとなっています。
その違いが「保険適応か否か」というもの。
ほかの違いもあるにはありますが、基本はこの「保険適用か否か」というところによって引き起こる違いです。
たとえば、対象者はどちらもうつ病患者ですが、保険の適用条件を満たしているかどうかというところも影響してきます。
そして、その条件のうちに「ほか精神病症状が見られない」という項目があるため、自由診療の場合は強迫性障害患者も対象者となります。
また、保険適用できるかどうかを見られるのは患者側だけではありません。
病院側も審査があるため、保険診療が実施されているのは一部の大学病院や総合病院などの大型病院に限られます。
当然、その分TMS治療の保険診療を行っている病院は自由診療を行なっている病院に比べて数は少ないのも特徴です。
TMS治療を受ける方法は?
TMS治療の「保険診療」と「自由診療」の違いがわかったところで、ここからは実際にTMS治療を受ける方法について解説していきます。
【TMS治療を受ける方法】
- 保険診療
- 自由診療
以上2つに分けて、それぞれ詳しく説明していきます。
【方法1】保険診療
まずは、保険診療によってTMS治療を受けるという選択肢です。
保険診療の場合は、当然保険の適用条件が設けられています。
詳しい条件や費用は、のちほど解説しています。
【方法2】自由診療
次に、自由診療で受ける選択肢について解説していきます。
自由診療の場合は、保険診療と違い適用条件はありません。
詳しい条件や費用は、のちほど解説しています。
意外にも、日本では保険適用並みに安いケースも存在します。
保険診療のTMS治療
ここまで、TMS治療を受ける方法について「保険診療」と「自由診療」2つの側面から解説してきました。
ここからは、それぞれ分けて、より詳しく説明していきましょう。
まずは保険診療に関して、以下2つの解説を行っていきます。
【保険診療関して】
- TMS治療の保険適用の条件
- TMS治療を保険適用で受けた場合の費用
それぞれ確認してください。
TMS治療の保険適用の条件
まずは、TMS治療を保険診療する場合の条件から見ていきます。
保険適用条件は以下の5つとなっています。
【保険適用条件5つ】
- 年齢
- 診断
- 薬物治療
- 入院可能性
- 機器と期間
それぞれ詳しく解説していきます。
【条件1】年齢
TMS治療の保険適用条件、まずは「年齢」です。
TMS治療は、頭部に当てた磁気コイルから、非侵襲的(体内に器具を入れず)に磁気刺激を与える治療法です。
体への影響も加味し、成人でないと保険適用できないようになっています。現在では18歳からの適用です。
【条件2】診断
TMS治療の保険適用条件、2つ目は「診断」です。
具体的には、DSM-5(精神疾患や精神病などの診断マニュアル)における「うつ病」と診断されることが条件です。
ただし、精神病症状や希死念慮を伴う重症うつ病に至っている場合は保険適用外となってしまいます。
【条件3】薬物治療
TMS治療の保険適用条件、3つ目は「薬物治療」です。
具体的には、以下の2つが条件となります。
【薬物治療を受ける2つの条件】
- 過去に抗うつ剤の薬物治療を受けている
- 薬物治療で効果が不十分
あくまで「抗うつ剤による薬物治療でカバーできていない部分をTMS治療で解決する」という位置づけになっています。
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【条件4】入院可能性
TMS治療の保険適用条件、4つ目は「入院可能性」です。
具体的には、2ヶ月の入院期間を確保できることが条件とされています。
ただ、実際には入院までの待機期間もあるため、2ヶ月以上の時間を確保できることが条件となります。
【条件5】機器と期間
TMS治療の保険適用条件、最後は「機器と期間」です。
これは入院期間ではなく、TMS治療を施す機器の治療期間への合意です。
具体的には、特定の治療装置に定められたプロトコル(6週間以内に30回)に合意し、かつその治療を受けられる身体状態であることが必要です。
TMS治療を保険適用で受けた場合の費用
TMS治療を保険診療で受ける場合の条件がわかったところで、ここからは実際に治療を受ける際にかかる費用を見ていきます。
主な費用は以下の3つです。
【主な費用3つ】
- 治療費(自己負担分)
- 入院費
- 日常生活費
それぞれ簡単に解説していきます。
【費用1】治療費(自己負担分)
まずは治療費です。
ほかの病気の治療同様、保険適用の場合も自己負担分を支払わなければなりません。
ただし、自己負担分も多くの場合「高額療養費制度」が保険とともに適用できます。
高額療養費制度とは、医療費が高額になった場合に一定の金額を超えた額が後日払い戻しされる制度です。
その際の医療費の上限額は、年収によって異なってきます。
保険診療でTMS治療を受ける場合には「6週間に30回」もの治療を行う必要があります。
当然、医療費の総額は高くなりますが、高額療養費制度を使うことで多少は自己負担額を抑えられます。
年収による個人差が激しいため具体的な数値は出しにくいのですが、日本人の平均年収「436万円」かつ「国民健康保険に加入している」ことを想定して計算すると、以下の自己負担額になります。
【自己負担金額】
- 高額療養費の上限(治療に関する自己負担額):約16万円
- 1セッションの自己負担額:約5,300円
うつ病の治療法として先進的にTMS治療を取り入れたアメリカでは、以下の金額が相場です。
【TMS治療を取り入れたアメリカ金額相場】
- 1セッションの非保険適用額:31,500〜63,000円
- 1セッションの非保険適用額(最安値帯):15,750円
いかに保険適用と高額療養費制度の併用が役立つかわかります。
【費用2】入院代
負担するのは治療費だけではありません。
入院代も自己負担となります。
具体的には、俗にいう「病床代」として場所を借りるイメージです。
つまり、治療費はもちろん、衣食に関する生活費は別途支払うことになります。
病床代の相場は場所にもよりますが、基本以下のとおりです。
【病床代の相場】
- 約0〜3万円
【費用3】日常生活費
最後に解説するのは日常生活費です。
先ほど入院代の事項で解説したように、日常生活において必要になる費用は入院代とは別で支払う必要があります。具体的には飲食費や衣服費など。
TMS治療で入院している期間分の費用がかかります。
保険診療でのTMS治療が普及していない理由
保険診療のTMS治療を受けるうえで、保険適用時の条件と保険適用時の費用は必ず押さえておかなければいけない事項ですが、くわえて押さえておきたい事柄があります。
それが「保険診療でのTMS治療が普及していない理由」です。
さまざまな制約があるため、病院でTMS治療に取り組むケースは「学術的な関心が高い」か「純粋に治療選択肢を増やしたい」のいずれかでしょう。
ここでは、保険診療でのTMS治療が普及していない理由を4つ、以下に列挙しました。
【TMS治療が普及していない理由4つ】
- 施設基準が設けられている
- 認知行動療法に熟知した医師が必要
- 機械などの出費が多く赤字になる
- 1回の治療に長い時間がかかる
それぞれ簡単に解説していきます。
【理由1】施設基準が設けられている
保険診療でのTMS治療が普及していない理由、1つ目は「施設基準が設けられている」です。
病床がなければ行うことができないという施設基準が設けられているため、病床を持たないクリニックはその時点でTMS治療を施せないということになります。
【理由2】認知行動療法に熟知した医師が必要
保険診療でのTMS治療が普及していない理由、2つ目は「認知行動療法に熟知した医師が必要」です。
TMS治療には、認知行動療法の専門の知識と実践できる技量が必要です。
そのため、認知行動療法の研修を受けた医師が勤務している必要があり、それもひとつのハードルになっています。
【理由3】機械などの出費が多く赤字になる
保険診療でのTMS治療が普及していない理由、3つ目は「機械などの出費が多く赤字になる」です。
保険適応となるTMS治療機器「ニューロスター」は、数百万〜数千万という莫大な購入費用がかかります。
また、消耗品についての問題もあります。
1回の診療報酬が約1.2万円貰えるのに対して、約1万円の出費がかかるといわれており、経営面でも潤沢にはなりにくいでしょう。
【理由4】1回の治療に長い時間がかかる
保険診療でのTMS治療が普及していない理由、4つ目は「1回の治療に長い時間がかかる」です。
治療法は既に確立されており、約40分の治療を週5回、計20~30回行うことと定められています。
そのため、1回の治療にかかる時間は長めといえます。
自由診療のTMS治療
ここまで、保険診療のTMS治療について網羅的に解説してきました。
ここからは自由診療のTMS治療について見ていきましょう。
同じように、以下2つの側面から解説します。
【自由診療のTMS治療について】
- TMS治療で自由診療が向いている人
- TMS治療を自由診療で受けた場合の費用
それぞれ確認してください。
【特徴1】TMS治療で自由診療が向いている人
まずはTMS治療が向いている人から簡単に解説していきます。
【TMS治療で自由診療が向いている人】
- 抗うつ剤の薬物治療を受けた経験がない
- 現実的に考えて、入院治療は困難である
- すぐに治療を始めたい
基本は保険適用条件外の方になりますが、病床が空くのを待てないという方も自由診療が向いているといえます。
【特徴2】TMS治療を自由診療で受けた場合の費用
次に、TMS治療を自由診療で受けた場合の費用を解説していきます。
自由診療の場合は保険診療と違い、病院側である程度費用の設定ができます。
TMS治療が普及しだした頃は高額な治療費を設定している病院もありましたが、今ではその数も随分と減りました。
設定金額には下限がないため、病院によっては保険適用時以上に安いこともあります。
全体の相場としては以下のとおり。
【TMS治療を自由診療で受けた場合の費用】
- TMS治療を30回実施した場合の費用相場:12万円~36万円
- 1セッションあたりの費用相場:4,000円~12,000円
以上を参考に、自由診療か保険診療かを決めてみてください。
TMS治療の保険適用条件はまだ厳しい
TMS治療は、うつ病に悩む方にとって希望の光ともいえる治療法です。
リラックスした状態で治療を受けられ、吐き気や食欲不振のような副作用もありません。
麻酔を使用しないため体への負担も少なく済み、赤ちゃんが欲しいと考えている方にも治療が可能と、メリットが大きいTMS治療。
現状、自由診療のメリットはほとんどなく、うつ病や精神疾患、発達障害に悩む多くの方が利用できるよう、保険適用の条件の緩和が早急な課題といえるでしょう。
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