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女性の引きこもりとは?特徴や実態、社会的な課題を解説

[2025.02.15]

「引きこもり」と聞くと、なんとなく男性をイメージする方は多いのではないでしょうか。
事実、厚生労働省による調査では引きこもりの7割以上が男性というデータが出ており、女性は少ないと結論づけられています。

しかし、それを誤りだと謳う声もあります。
日本では、女性が自宅にいることが不自然に思われない役割に身を置くことも多く、実態が不透明なのです。
そのため、社会全体で女性の引きこもりについて詳細な調査や研究を行うことが求められています。

この記事では、女性の引きこもりの概要や引きこもってしまう原因、社会の課題を解説していきます。
ぜひ参考にしてください。

目次

1.女性の引きこもりは意外と多い
2.女性の引きこもりに関する専門的な調査は行われていない
3.引きこもりの定義
4.女性が引きこもりになる原因
5.女性が引きこもりになりやすい時期
6.見えない引きこもりも女性に多い
7.女性に引きこもり支援に関する問題点
8.引きこもりでお悩みの方は赤羽すずらんへ

女性の引きこもりは意外と多い

女性の引きこもりは、男性よりも少ないと思われやすいです。
実際に厚生労働省が行った調査でも、下記のようなデータが出ています。

男性 76.9%
女性 23.1%

参考:「社会的ひきこもり」に関する相談・援助状況実態調査報告|厚生労働省

しかし、実態は異なるのではという声もあります。
引きこもりの女性が「家事手伝い」や「専業主婦」など、社会的に受け入れられやすい立場に身を置くことが多いためです。

日本では古くからの慣習により、女性が自宅にこもって家事をする傾向も強いです。
引きこもりの女性の中には、外部との接触は難しくても、自宅では問題なく過ごせる方もいます

専業主婦などが隠れ蓑となっているため、女性の引きこもりの実態は把握しづらく、社会的な理解や支援が進まない状態が続いています。

女性の引きこもりに関する専門的な調査は行われていない

引きこもりに関する調査報告自体は、数多く存在します。
しかしいずれも女性の割合が少なく、専門的な調査を行うにはデータが不十分です。

行政や研究機関は「引きこもり」として顕在化しやすい男性事例を優先的に把握する傾向があり、女性に特化した調査が進んでいません。
そのため、女性特有の引きこもりの要因や、社会復帰に有効な手段などが、男性ほど明らかになっていないのです。

引きこもりの定義

厚生労働省は引きこもりの定義を、次のようにしています。

様々な要因の結果として社会的参加(就学、就労、家庭外での交遊など)を回避し、原則的には6ヵ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態を指す現象概念(他者と交わらない形での外出をしていてもよい)

引用:「ひきこもり」の定義など|厚生労働省

必ずしも精神疾患を伴うものではなく、多様な要因から生じる可能性があります。
たとえば、外出はしているものの散歩のみで、半年以上家族としか交流していない場合も、引きこもりの定義に該当します。

女性の場合、家事・育児に追われる中で外出や他者交流が減少し、引きこもりに近い状態になるケースも少なくありません。
しかし周囲から「ただ忙しいだけ」と見なされ、問題として認識されにくいことが多いのです。
この定義を正しく理解し、多様な背景を踏まえた引きこもりの実態調査が求められます。

女性が引きこもりになる原因

女性が引きこもりになる原因には、下記のようなものがあげられます。

● 人間関係がうまくいかない
● 精神疾患を起こしやすい
● ホルモンバランスの影響を受けやすい
● 性暴力やDVの被害に遭った
● 出産後に社会復帰のハードルが高い
● 周囲との関わりが減った

社会から期待される役割や対人関係の悩み、精神的負担、身体の不調など、多様な要素が絡み、自宅から出られなくなってしまうのです。
原因別に詳しく解説します。

人間関係がうまくいかない

女性は、周囲との関係性やコミュニティ内での立場に敏感な人が多いです。
人間関係でストレスを感じやすく、孤立を招く一因となります。
たとえば、職場や家庭内でのトラブル、学校での友人関係の変化など、対人摩擦が続くと外出や交流を避けるようになります。

また学校でのいじめなど、外部からの強い刺激が原因の場合は、引きこもりが長期化することも。
トラウマを抱えることで外部接触が怖くなり、社会復帰が難しくなるのです。

精神疾患を起こしやすい

女性はホルモンの変動が激しく、人間関係や生活環境の変化などに敏感です。
男性に比べてストレスの原因が多いため、うつ病や不安障害などの精神疾患を発症しやすいといわれています。

度重なるストレスにより、人付き合いや外出への意欲が低下すると、殻に閉じこもりやすくなります。
精神に不調を感じたら、カウンセリングを受ける、1人でリフレッシュする時間を作るなど、早めに対策を取ることが大切です。

ホルモンバランスの影響を受けやすい

女性は生理や更年期などに伴い、ホルモンバランスが大きく変動します。
その結果肉体・精神に下記のような不調をきたすことがあります。

生理

● 下腹部痛・腰痛

● 吐き気 ● 頭痛

● 寒気・発熱

● イライラ感

● 倦怠感

● 疲労感

更年期

● 動悸・息切れ

● 口の乾き

● 頭痛

● めまい

● ほてり・のぼせ

● イライラ感

● 不安感

生理の期間は3〜7日程度ですが、期間の前後からホルモンバランスが乱れることも多いです。
また、初潮から閉経まで35〜40年程度かかり、その後は更年期に入ります。

つまり、女性は月の3分の1〜半分程度ホルモンバランスが乱れている状態が、何十年も続くのです。
個人差はあるものの、気分の落ち込みや体調不良が起こりやすくなり、外出や人付き合いが億劫になります。
ケアをしないと精神疾患による引きこもりに発展しやすいため、女性特有のホルモンバランスの変化を理解しておくことが重要です。

性暴力やDVの被害に遭った

性暴力やDVは、女性に大きな肉体的・精神的なダメージを与えます。
強いトラウマを植え付けられ、他者への不信感や恐怖心から外部との接点を断つ原因となります。
外に出ると同じことが起こるかもしれないという思いから、自身の身を守るために、自宅に閉じこもってしまうのです。

また、性暴力やDVの被害を周りに相談できず、精神を病んでしまうこともあります。
内閣府の調査では、女性の14人に1人が無理やり性行為をされた経験があり、内約60%が誰にも相談していないというデータが出ています。(※1)

被害に遭ってしまったら、1人で抱え込まないことが大切です。
信頼できる友人や家族、カウンセラーなどを頼りましょう。

※1:無理やりに性交等された被害経験等(令和2(2020)年度)|内閣府男女共同参画局

出産後に社会復帰のハードルが高い

近年、産休や育休の制度が充実した企業も増えてきましたが、女性の社会復帰のハードルはまだまだ高いです。
復帰後も時短勤務にならざるを得ず、収入が減る、重要なタスクを任せてもらえないなど、解決すべき課題も多いです。

また、産後に精神的・体力的に消耗し、予定どおりに復帰できない女性も少なくありません。
加えて、受け入れ可能な保育園が見つからず、年単位で復帰が遅れるケースも。

焦りから孤立感や不安感が増した結果、外部との接触に恐怖を感じるようになります。
退職を選択せざるを得なくなり、ブランクから転職もうまくいかず、そのまま引きこもりになるのです。

女性の社会復帰の問題は、社会全体で取り組む必要がある大きな課題です。
個人では、理解のある会社に就職する、スムーズに復帰できなかったときのプランを考えていくなどの対策が重要になります。

周囲との関わりが減った

ライフステージの変化や、家族構成の変動に合わせて、友人関係が希薄化していくことはよくあります。
家庭を持つと外出できないことも増え、他者との交流の機会はますます減ります。

なかでも専業主婦は、家計をパートナーに支えてもらっている負い目から家庭に専念し、外部との交流を遮断することも。
この場合定義には該当するものの、引きこもり扱いされないことが多いです。
周囲に気づかれず、引きこもりを自覚できないため、改善がしづらい状態になっています。

女性が引きこもりになりやすい時期

女性は人生の節目や環境変化が大きい時期に、引きこもりになりやすい傾向があります。
とくに下記の2つで、顕著に表れやすいです。

● 思春期
● 就職したて

それぞれ詳しく解説します。

思春期

思春期は体や心が大きく変化し、女性は自己理解や対人関係で多くの葛藤を抱えます。
外見のコンプレックスや、学校での人間関係のストレスなどを男性に比べて感じやすく、自分を守るために外出を避けることがあります。
このような時期に、周囲の理解や適切なサポートが不足すると、引きこもり状態に陥りやすくなるのです。

また、家族関係も引きこもりとの関わりが深いといわれています。
親が威圧的な態度で接したり、人格否定をしたりすると、思春期の子供は振る舞い方が分からなくなります。
したがって思春期の女性には普段から適切な距離感で接し、適度に目をかけながら不調が見えたら寄り添うことが大切です。

就職したて

就職直後は、新しい職場環境や業務内容に慣れておらず、ストレスを感じやすいです。
そのような時期に下記のような出来事があり、強い挫折経験を覚えた結果、引きこもりになる人は多いです。

● 優秀な同僚と自分を比較する
● 上司からパワハラを受けた
● 理想と現実にギャップがあった

もしこのような状況で引きこもってしまった場合、まずは無理せず休みましょう。
精神的に疲れている状態で自分を追い込むと、重度な精神疾患になるおそれもあります。

気持ちが追いついてきたら、短時間から働けるアルバイトなどで、少しずつ社会と関わることが大切です。
働きやすい環境に身をおき、無理のないペースで気持ちを整理しましょう。

見えない引きこもりも女性に多い

下記のような女性は社会的に受け入れられやすいため、引きこもりになっていても気づかれないことがあります。

● 家事手伝い
● 専業主婦

それぞれ詳しく解説します。

家事手伝い

家事手伝いは、炊事や洗濯、掃除、介護などの家庭生活に必要な仕事を行う人を指す言葉です。
引きこもりになっても、家族となら問題なく接することができるケースもあります。
家事を積極的に行っていることから、問題なく生活できていると誤解され、引きこもりだと思われないのです。
とくに、介護などを行っている場合、家族のために頑張っていると認識されやすいです。

また引きこもりではなくとも、家事手伝いをきっかけに外部との交流が減り、精神を病んでしまう人もいます。
いずれも外部からは気づかれづらいため、本人が悩みを抱えていても支援を受けられない一面があります。

専業主婦

専業主婦として生活する女性は、外部との接点がなくても、家族サービスとして認識されやすいです。
引きこもり状態になっていても、周囲に気づかれないどころか、「家族思いな人」「いい奥さん」などの賞賛を浴びることもあります。
とくに子供がおらず、ママ友などができるきっかけがない場合は顕著になりやすいです。

そのため専業主婦のパートナーがいる場合は、精神的に孤立しやすい役割であることを理解することが大切です。
習い事に通ってもらうなど、外部と交流するきっかけを作りましょう。

女性に引きこもり支援に関する問題点

女性の引きこもり支援に関する問題点は、大きく下記の2つです。

● 有効なデータが存在しない
● 女性だけの支援施設が少ない

女性の引きこもりは、実態が見えづらいことから、有効な調査データが存在しません。
引きこもりに関する調査や研究は、顕在化しやすい男性にフォーカスされることがほとんどであるためです。

引きこもりの女性の潜在的ニーズが分からず、支援施設や政策が少ないのが現状です。
当事者の社会復帰を促すには、女性の引きこもりの調査を進め、実態を明らかにすることが課題となっています。

とくに大きな課題は、女性専用の支援施設が少ないことです。
性暴力やDVの被害が原因で引きこもりになった女性は、男性に強い恐怖心を抱いているケースもあります。
職員やカウンセラー、利用者に男性がいる場合、施設の利用がストレスになるため、適切なケアを受けられないのです。
また、同性からのいじめなどが原因で引きこもりになってしまった方のために、個別でケアが受けられる施設なども必要です。

社会復帰を円滑に進めるためにも、女性の引きこもりに関する具体的な調査と施策の実行が、急務となっています。

女性の引きこもりは不透明な部分が多い

女性の引きこもりの割合は、男性に比べて少ないというデータが出ています。
しかし、それは顕在化しているケースの話です。
女性は家事手伝いや専業主婦など、引きこもりに該当しながらも、周囲に不自然に思われないケースは往々にしてあります。

そのため、女性の引きこもりに関する具体的な調査や研究は進んでおらず、詳細なデータが足りていないのが現状です。
引きこもってしまった女性の社会復帰を促進するには、1日でも早く実態を明らかにし、適切な支援体制を構築することが求められます

引きこもりでお悩みの方は赤羽すずらんへ

女性の引きこもりは定義が曖昧になりやすく、自覚を持ちづらいです。
そのため、知らず知らずのうちにメンタルに不調をきたしているおそれもあります。
少しでも異変を感じたら赤羽メンタルクリニックにご相談ください。
女性医師が悩みや状況を丁寧にヒアリングし、ストレスが軽くなる方法をご提案いたします。

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監修者

土屋 恵理子
赤羽すずらんメンタルクリニック 院長

<資格>
精神保健指定医
精神科専門医・指導医
認知症サポート医
日本医師会認定産業医
コンサータ・ビバンセ登録医師

<経歴>
帝京大学医学部付属溝口病院精神科
医療法人社団 ハートフル川崎病院
介護老人保健施設 慈宏の里
東京都や千葉県内のクリニック、東海渡井クリニックにて
精神科訪問診療、光トポグラフィー・TMS治療に従事
赤羽すずらんメンタルクリニック開設

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