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TMS治療で双極性障害は治せる?メリットとデメリットを解説

[2023.08.10]

双極性障害を治す新しい治療法として、2019年に保険適用診療として認められた「TMS治療」。お薬に頼らず、短期間で治療を進められることから注目を集めています。

しかし、ネット上の噂で
「TMS治療は、躁状態を悪化させるケースがある」
「けいれんなどの副作用がある」
といった記事を読んで、治療に不安を感じているという方も少なくないでしょう。

本記事では、躁状態と抑うつ状態を繰り返す「双極性障害」を治す効果があるとされているTMS治療のメリット・デメリットについて解説します。
症状に悩む全ての患者さまが安心して治療に向き合えるよう、わかりやすくまとめました。ぜひ、ご参考ください。

目次

1.双極性障害にTMS治療が効く理由
2.双極性障害とは?
3.双極性障害の症例
4.双極性障害に対するTMS治療の効果
5.TMS治療のメリット
6.TMS治療のデメリット
7.TMS治療のメリット・デメリットを理解しよう

双極性障害にTMS治療が効く理由

TMS治療は、双極性障害における「抑うつ」状態に効果があるというエビデンスが発表されています。
TMS治療を専門として世界的に研究活動を行う精神科研究医・野田賀大が発表した講演内容によると、標準的なTMS治療を30セッション実施した場合、下記の臨床成績を得ています。

  • 患者の5割がうつ症状の重症度を半分以下に改善できた
  • 患者の3割がうつ症状を部分的に改善できた
  • 患者の2割が改善を認められなかった

専門医による10年間の臨床結果から、前頭前野に対するTMS治療は双極性障害の「抑うつ」状態を改善する可能性が高いことが確認できます。

こちらの記事では、TMS治療の効果と安全性について詳しく解説しています。あわせてぜひご覧ください。
TMS治療とは?効果や安全性について解説

双極性障害とは?

双極性障害とは、気分が高揚している「躁」状態と、何をしても気分が落ち込んでしまう「抑うつ」状態を繰り返して起こる精神疾患です。

うつ病と同じ部類と思われがちですが、双極性障害はうつの状態に加えて、異様に活動的になって気分のコントロールが効かない状態が交互に表れます。一見、わかりやすい病気のように思えますが、あまり周知されていないため、見落とされがちな病気です。

「躁」状態では、気分が高揚して誰彼構わず話しかけたり、普段ならしないような突拍子もない行動を取ったりして周りを驚かせます。一方で、「抑うつ」状態になると、気分が暗く落ち込み、何をしても楽しいと思えなくなってしまいます。

気持ちのコントロールが図れず、不安な日々を送っている方が多いです。

双極性障害の症例

双極性障害には、躁状態の程度によって次の2つの症例に分けられます。

  • 双極性障害Ⅰ型
  • 双極性障害II型

自分がどちらの症状に近いか、見ていきましょう。

双極性障害Ⅰ型

双極性障害Ⅰ型は、周囲から見て明らかに激しい「躁」状態が起こっている状態です。ほとんど眠らず、一日中テンションが高く、常に喋り続けたり動き回ったりするため、周りの家族や友人はその様子に困惑してしまいます。

一つのことに集中できず、複数のことに対して過剰に興味を示すため、仕事もおざなりになってしまい、休職または退職するという方も少なくありません。
日常生活では、借金をしてまでハイブランドの服やカバンを購入したり、ホストに何十万円と貢いだりして、金銭トラブルを引き起こす例も。

周囲からの信頼を失ってしまいます。

明らかに異常な行動を取っているため、周りからの勧めで病院へ受診される患者さまが多いです。

双極性障害II型

双極性障害Ⅰ型は誰でも異常だとわかるほどの「躁」状態ですが、一方で、双極性障害II型は軽度であるため、当事者も周囲も気付きにくいとされています。

II型は「軽躁」状態と言われており、通常時より気分が高まり、いろいろな人に積極的に話しかけたりイベントに参加したりと活動的になります。
睡眠時間が短くても、日中に眠たくなることなく元気に行動できます。

周囲からは「今日はテンションが高いな」程度の認識で、精神疾患であると認識されることは少ないです。本人も「いつもより気分が晴れて、調子がいい」とプラスに捉えられるため、受診に至りにくいでしょう。

こちらの記事では双極性障害とうつ病の違いについて、解説しています。

双極性障害とうつ病の違いとは?症状や治療法の特徴を解説!

 

双極性障害に対するTMS治療の効果

TMS治療は、日本語で「反復経頭蓋磁気刺激療法」という意味です。
刺激コイルを使用して脳にシナプスの働きを与えます。薬物療法と心理療法に並ぶ第3の治療法として国内外で認められています。

TMS治療を受診することで、双極性障害に与える効果とはいったいどのようなものなのでしょうか?
例えば、次のような効果が実証されています。

  • 気分の落ち込みの改善
  • 疲労感の改善
  • イライラの改善
  • 普段通りに仕事ができる
  • 食欲の改善
  • 寝つきが良くなる

ほかには、音に対する過敏性が和らいで、めまいの症状が無くなったという声も出ています。

元の平穏な日常生活を取り戻し、周りとのコミュニケーションも問題なく図れるようになるでしょう。

TMS治療のメリット

TMS治療は、投薬治療や心理療法でも症状の改善が見られなかったという方に推奨されています。
不安障害や強迫性障害に苦しんでいる方にも適応されるケースもあります。

ここでは、TMS治療を受けるメリットをご紹介します。

投薬を減らせる

身体上の都合で薬物処方での治療はなるべく避けたいという方も多いでしょう。

例えば、授乳中、または妊活中の女性は薬の服用は身体への影響を考慮して控えなければなりません。それ以外でも、薬を常時服用することに心理的な抵抗感があり、投薬以外の治療を行いたいという方は少なくないでしょう。

また副作用のリスクを避けるために投薬を少なくしたいとお考えの方もいます。
薬物処方は、頭痛やめまい、下痢、性機能不全などの副作用を引き起こす可能性があります。

TMS治療は薬物処方に比べて副作用のリスクが少なく、治療中も変わらず日常生活を送れることから安心して治療に進めると評価されています。

安全性が高い

TMS治療は、頭に直接コイルを付け電気刺激を与える治療法。「脳に磁気を直接与えるなんて、危ない治療法なんじゃないか」と不安に感じてしまうでしょう。

TMS治療は、国内ではまだ認知率が低いですが、脳の働きを正常に整える革新的な治療法です。双極性障害以外にも、性疼痛や神経疾患などさまざまな病状に効果があると世界的に注目を浴びています。

治療内容の似ている電気けいれん療法に比べて、体へ与えるリスクを抑えられます。副作用のリスクも少ないことから、治療に伴うあらゆるリスクを押さえる安全性の高い治療法です。

治療時間が短い

1回あたりの治療時間は、3分〜30分程度と短く、長くても1時間程度で終了します。

治療時間が短いことから、心身へのストレスも少なく治療に励むことができるでしょう。近所に病院があれば、仕事や家事の合間に通院できるため、日常生活とのバランスもとりやすいです。

治療時間が短いため、通院のストレスも少なく継続的に通えるでしょう。

副作用が少ない

TMS治療の最大のメリットは、ほかの治療に比べて副作用が少ないことです。
双極性障害を改善する一般的な治療法である「投薬治療」の副作用として、下記が挙げられます。

  • 頭痛・めまい
  • 腹痛
  • 眠気
  • 性機能障害・肝機能障害
  • 認知機能の低下

一方で、TMS治療は脳へ直接刺激を送る治療法のため、全身への副作用はほとんどありません。
そのため、治療期間も仕事や家事、育児にすぐに戻ることができます。薬を服用しないので、周囲に悟られることなくいつもと変わらない日常生活を送ることができるでしょう。

TMS治療のデメリット

TMS治療には、副作用の少なさや安全性の高さがメリットとして挙げられますが、一方でデメリットも存在します。
納得してTMS治療に臨むためにも、デメリットもしっかり確認しておきましょう。

副作用がないわけではない

薬物療法と比べて副作用が少ないですが、全くないわけではありません。
安全性は考慮されてはいるものの、以下のような副作用が知られています。

  • 頭痛
  • 顔のけいれん・不快感
  • 頭皮痛・刺激痛

脳へ磁気を用いて刺激を送る治療法のため、頭部の筋肉の収縮が起き、違和感や痛みを感じる方も稀にいます。

とくに注意すべき副作用が「けいれん誘発発作」です。磁気の刺激頻度が高い、または強度が強い際に発作を引き起こしやすいと言われています。

保険適応のハードルが高い

2019年に厚生労働省によって保険適応が認められたTMS治療ですが、実際に適用するためにはいくつかの条件を満たす必要があります。
保険を適用できない場合は、自由診療となります。自由診療は、保険診療と違って料金が一律ではないので、費用が一気に高額になります。

保険診療で受診するためには、DSM-5における「うつ病」と診断されていること、2ヶ月の入院期間を確保できることなど複数の条件を満たさなければなりません。
現状、全ての要件を満たしている患者さまは少なく、自由診療を選ばざるを得ないでしょう。

診療できる医院が少ない

TMS治療は、1990年代前半より海外で臨床研究が開始され、日本では2019年に保険適応となった最先端の治療法です。
そのため、日本では首都圏に位置する限られた病院にしか導入されておらず、地方エリアに住む方にとってTMS治療を受診することはまだまだ難しいです。

TMS治療はこまめな通院が必要なため、遠方から通うには交通費や移動時間がネックとなります。

日本での歴史が浅いため、気軽に通えるようになるまでには時間がかかるでしょう。

TMS治療のメリット・デメリットを理解しよう

いかがでしたでしょうか。

今回は、双極性障害に悩む方に向けてTMS治療のメリット・デメリットをご紹介しました。TMS治療には、副作用が少ないことや治療時間が短いといったメリットがある一方で、国内で診療できる病院が少なく、まだまだ保険診療の道は遠いデメリットがあります。

安全性の高さと気軽に治療を受けられることから、妊婦や投薬を減らしたいという方からの需要が高く、今後TMS治療を導入する病院は増加傾向にあるでしょう。

TMS治療は赤羽すずらんメンタルクリニック

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