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TMS治療は発達障害にも効果が出る?治療の特徴も解説

[2024.04.30]

近年研究が進んでいる治療法のひとつに、TMS治療があります。

日本では2019年に保険適用となったことから、国内での認知度も徐々に高まりつつあります。

また、TMS治療は発達障害との関連も議論されています。

しかし、TMS治療がまだあまり広く知られていないことから、その効果に懐疑的な方も少なくないでしょう。

本記事では、TMS治療の特徴や、治療をおすすめしたい方の特徴などについて解説していきます。発達障害にお悩みの方や、TMS治療を検討している方は、ぜひご覧ください。

目次

1.TMS治療とは?
2.TMS治療の特徴
3.TMS治療の効果
4.TMS治療がおすすめの方
5.TMS治療は発達障害にも効果があるのか
6.TMS治療を受ける回数
7.TMS治療の費用の相場
8.TMS治療が発達障害に効果があるのかは研究段階

TMS治療とは?

TMS治療は「Transcranial Magnetic Stimulation」の頭文字をとった名称で、別名「経頭蓋磁気刺激療法」といいます。

磁気を利用して脳に繰り返し電気刺激を与えることによって、脳の働きに作用する治療法です。この治療法は、うつ病の治療において、薬物療法や心理療法と並ぶ第3の選択肢として、2019年から認められています。

TMS治療の基礎は、1834年に「ファラデーの法則(電磁誘導の法則)」が発見され、電流と磁場の関係が研究されるようになったところまで遡ります。

19〜20世紀には発電機や変圧器、電車などにこの知見が活用されていましたが、近年では脳のピンポイントな電気刺激にも応用されるようになりました。

以降、TMS治療は痛みを伴わない脳刺激法として、神経の診断や基礎研究で使われるようになり、その後臨床心理の場での活用へと至ります。

こちらの記事では、今注目のTMS治療に関するメリットとデメリットについて解説していきます。あわせてぜひご覧ください。
TMS治療(磁気治療)のメリット・デメリットを解説

TMS治療の仕組み

TMS治療は、前頭葉にコイルを当てて磁気刺激を行います。コイルに電流を流すことで磁場を発生させ、その磁場を変動させることで脳血流のバランスを整えるのです。

これにより、脳の機能を調整し、集中力、思考力、意欲などを向上させる効果が期待されています。

TMS治療の特徴

次に、TMS治療の主な特徴を、次の4つに分けて解説していきます。

  • 副作用が起こりにくい
  • 安全性が高い
  • 治療の負担が最小限に抑えられる
  • 再発が少ない

それぞれ見ていきましょう。

特徴①副作用が起こりにくい

TMS治療は、副作用が起こりにくいと言われています。

薬物療法とは異なり、脳に対して直接刺激が与えられることから、全身に広がる薬物の副作用が起きにくいためです。

ごくまれに頭痛や刺激部位の不快感、筋収縮、顎や歯の痛みといった一時的な副作用が報告されていますが、仮に発現したとしても軽度で、一過性のものです。

もし治療回数を重ねても副作用が軽減されない場合は、必ず医師に相談してください。

特徴②安全性が高い

TMS治療は安全性が高い治療法といわれています。

その最たる根拠は、非侵襲的な手法(ここでは「体に穴を空けない」と考えて構いません)であり、手術や麻酔が不要なことから、身体への負担が少ないことです。

副作用の少なさも相まって、TMS治療の安全性への懸念点は少ないと言えるでしょう。

特徴③治療の負担が最小限に抑えられる

治療の負担が最小限に抑えられるといった点も特徴として挙げられます。

薬物療法や心理療法の場合は長期的な計画が必要ですが、TMS治療の場合は比較的短い時間で行われます。

また、入院する必要がないことから、日常生活を維持しながら受けられます。

そのため、内容の面でも期間の面でも治療にかかる負担が軽く、患者のライフスケジュールへの影響も最小限に抑えられます

特徴④再発が少ない

TMS治療は再発が少ないという特徴もあります。

TMS治療には脳の神経回路を正常化させる効果があり、その結果うつ病などの症状を改善できます。

TMS治療は薬物などの対症療法とは異なり、根本的治療が見込めるのです。

これにより、症状が長期的に抑制され、再発のリスクが減少します。

ただし、当然再発のリスクは個人によって異なるため、定期的なフォローアップやメンテナンスセッションが重要です。

専門の医師との相談を通じて、最適な治療計画を立てることが求められます。

TMS治療の効果

TMS治療の効果は、文献によれば一般的には3〜4割程度の改善が認められます。

しかしながら、TMS治療はまだ新しい治療法であり、プロトコール(治療に関する規定・手順・計画)によっては8〜9割の改善効果が報告されています。

今後の研究により、さらなる効果の上昇が期待されていると言って良いでしょう。

TMS治療がおすすめの方

TMS治療は、薬を服用せずにうつ病などを治療できるため、薬の副作用が私生活に大きな影響を与える可能性のある方にとっておすすめです。

具体例として、次のような方におすすめです。

  • 運転業務やパイロットなどをしている方
  • 妊婦や授乳中の女性
  • うつ病で薬物治療を受けても改善が見られない方
  • 薬の服用を減らしたい方
  • 薬の副作用に悩まされている方
  • 肝機能障害や腎機能障害などの持病で薬が飲めない方

TMS治療は個々の状況に応じた選択肢として考えられ、薬物治療が適さない場合でも効果的な治療法のひとつとして期待されています。

子どもでもTMS治療を受けられる?

TMS治療は、18歳以上の患者が対象です。脳神経系の疾患やうつ病の治療方法として注目されているものの、子どもに対して行うことは現状推奨されていません。

子どもの脳は未発達であり、TMS治療が及ぼす影響やリスクが大きい可能性があるためです。

脳の発達が未完成な段階では、外部からの刺激が脳の機能や発達に与える影響が予測しづらく、悪影響が生じる可能性が捨てきれません。

日本精神神経学会が作成した適正使用指針でも、子どもに対するTMS治療は認められていません。

この指針は、医療従事者に対してTMS治療の適切な使用方法を示すものです。

将来的に子どもに対するTMS治療の研究が進展し、安全性や有効性が確認される可能性もなくはありませんが、あまり期待はできないでしょう。

潜在的なリスク(治療数年後〜十数年後に後遺症が発現するリスク)を考慮すると、子どもへの治療試験が必要になるわけですが、倫理的な壁が立ちはだかります。

そのため、一般的に子どもへの治療は、薬物治療かカウンセリングにおける認知療法などが適用されます。

TMS治療は発達障害にも効果があるのか

現時点では、TMS治療が発達障害に対して直接的な効果があるかどうかは不明です。

発達障害に伴ううつ病などの二次障害に対しては効果があるかもしれませんが、発達障害自体の特性を改善する効果についてははっきりとは言えません。

たしかに発達障害は、最新の診断マニュアルでは「神経発達症」という名称が使用されており、TMS治療が効果的な治療法に思えるかもしれません。

しかし、信頼性のある臨床報告はまだ存在しないのが事実。

発達障害と関連する臨床研究はいくつかありますが、その精度はどれも低く、結果も矛盾していることが現実です。

TMS治療が発達障害の改善にどれほど効果があるかは、よりたしかな研究が進行するまで明確には言えません。

そもそも発達障害とは

そもそも発達障害とは何か、今一度押さえておきましょう。

発達障害は以下の3種類に大別されますが、そのうち前者2つは併発するのが一般的です。

  • ADHD(注意・欠如多動症)
  • ASD(自閉スペクトラム症)
  • LD(学習障害)

それぞれ、特性と主な治療法を解説していきます。

ADHD(注意・欠如多動症)

ADHD(注意・欠如多動症)の特性は以下の2つです。

  • 不注意
  • 多動・衝動性

「不注意」としてはケアレスミスの多さや過度な忘れ物が、一方の「多動・衝動性」としては、椅子にじっと座っていられない、異常な頻度で散財してしまうなどが挙げられます。

適切な治療法は特性によって異なりますが、薬物治療とカウンセリングが併用されるのが一般的です。

基本的には薬物によって特性が抑えられますが、カバーしきれない部分や、むしろ薬物に頼らなくてもいいほどの発症度合いだった場合、生活指導を含むカウンセリングが用いられます。

ASD(自閉スペクトラム症)

ASD(自閉スペクトラム症)の特性は以下の2つと定義されています。

  • 社会的コミュニケーションおよび対人相互反応における持続的な欠陥
  • 行動、興味、または活動の限定された反復的な様式

前者は「皮肉が伝わらない、過度に空気が読めない」など、後者は「強いこだわり、好きなものへの異常な執着」などが該当します。

治療法としては、カウンセリングが一般的です。

薬物治療もなくはないですが、現状ADHD(注意・欠如多動症)ほど効果的ではありません。ただし、先述したようにADHD(注意・欠如多動症)とASD(自閉スペクトラム症)は多くの確率で併発します。

そのため、主障害がASD(自閉スペクトラム症)と診断されても、ADHD(注意・欠如多動症)の特性を懸念し、薬物が処方されることもあります。

LD(学習障害)

LD(学習障害)は、最新の診断マニュアルでは「SLD(限局性学習障害)」と改名されており、その名の通り「『ある特定の』学習能力に著しい困難を示す発達障害」です。

具体的には、読む、書く、話す、計算するなどが挙げられます。

そのため「勉強は並以上にできるにもかかわらず、音読がうまくできない」や「論理的思考力は高いけれど、簡単な四則演算が異常に遅い」といったことが起こります。

治療法としては、カウンセリングが一般的です。親への心理教育、教師へのコンサルテーション、二次障害への心理療法などが挙げられます。

場合によっては、特別支援教育を視野に入れることもあります。

TMS治療を受ける回数

TMS治療の頻度と回数は個人によって異なる場合がありますが、一般的には週5回連続で刺激を行うことが推奨されています。

治療のプロセスとしては、全体で30回程度の治療を行うことが一般的です。

未だ研究段階でありながら、現状はこれが効果を最大化するための適切な回数とされています。

また、治療が終了した後も、再発予防のためにメンテナンスとしての治療が推奨されています。これは、一定の頻度で定期的に治療を受けることで、効果を維持することを目指すものです。

TMS治療の効果が現れるまでの期間

TMS治療を週5回連続で行った場合、およそ10回ほどから効果が現れることが一般的です。

TMS治療は脳の神経回路に直接刺激を与えることで効果を得ますが、ある程度の刺激を加える必要があります。

人が何かを記憶するために繰り返しインプットを重ねるように、TMS治療も持続的な刺激を与えることで効果が現れやすくなるわけです。

TMS治療の費用の相場

TMS治療を検討するにあたって気になるポイントのひとつとして、費用相場が挙げられるでしょう。また、保険適用内であるか否かでも大きく異なります。

TMS治療は保険適用も可能ですが、プロトコールに制限があったり、長期的な治療計画になったりといったデメリットがあります。

ここからは、TMS治療の費用相場について、保険診療の場合と自由診療の場合に分けて解説していきます。

保険診療の場合

保険診療の場合、費用相場は1セッションあたりの費用相場は5,000円〜16,000円です。完了までの30回を実施するとなると、合計15万円〜48万円ほどかかります。

TMS治療を保険診療で受ける最たるメリットは、安全性でしょう。安全性の高いプロトコールを使用するだけでなく、特定の認定病院でのみ行われる点も安心できます。

ただし、保険診療には以下のような条件があります。

  • 成人している
  • 中等度のうつ病(診断済)である
  • 抗うつ剤治療の経験がある
  • 薬物治療の効果が十分認められなかった過去がある
  • 2ヶ月程度の入院が可能である

自由診療の場合

自由診療の場合、1セッションあたりの費用相場は4,000円〜12,000円です。完了までの30回を実施したとした場合、合計額は12万円〜36万円となります。

アメリカ合衆国では1セッションあたり31,500円〜63,000円、最安値帯でも15,750円と高額なため、自由診療とは思えないほどリーズナブルと言えるでしょう。

なお、この相場以上に安い場合は、倫理的な問題を抱えている可能性も否めないため、十分に確認するようにしてください。

TMS治療が発達障害に効果があるのかは研究段階

今回は、TMS治療と発達障害の関連性について解説してきました。

TMS治療は副作用が少なく、手術や麻酔などが不要なことから、身体への負担が少ない非侵襲的な治療法といわれています。

一般的なうつ病の改善には、文献によれば約3〜4割の改善率が報告されています。TMS治療が発達障害に対して効果があるかどうかについてはまだ研究段階にありますが、うつ病を伴う発達障害である場合、TMS治療による効果が期待できる可能性があります。

将来的な研究によって、TMS治療が発達障害への効果が期待されている現状です。

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