目次

1.TMS治療とは？
2.なぜ不眠症にTMS治療が効果的なのか？
3.TMS治療のメリット
4.TMS治療のデメリット
5.不眠症の中でもこんな人はTMS治療がおすすめ
6.TMS治療は不眠症状や治療に悩んでいる方におすすめ

TMS治療とは？

TMS治療はアメリカで提唱された最新のうつ病治療法のことで、薬に頼らず症状を改善させる効果が期待できるのが特徴です。
機能低下が見られる前頭葉にコイルを当て、繰り返し電流を流し神経細胞を刺激するという方法で、日本語では「経頭蓋磁気刺激法」と呼ばれます。
左前頭前野に高頻度で電気刺激を与えることで脳の血流を促して活性化、一方の右前頭前野には低頻度で電気刺激を与えることで過活動している扁桃体の働きを抑制し、脳全体のバランスを整えることを目的としています。
TMS治療に期待される効果は、以下の通りです。

• 集中力、意欲の向上
• 寝付きの改善
• 抑うつ気分の改善
• 疲労感の減少
• 精神面の安定

TMS治療の最大の特徴は、薬を服用せずにこうした効果が期待できることです。
すぐにでも改善したい受験生、副作用が心配で薬が飲めない授乳中の方や運転業務についている方など、幅広く対応できるのも魅力といえるでしょう。

TMS治療は保険適用可

TMS治療は、2019年6月より保険適用となりました。
とはいえ、適用条件が定められており、希望する全員が保険診療内でTMS治療を受けられるわけではありません。
そのため、2023年現在であっても自費診療で治療を受けている方が多くいるというのが実情です。
保険適用の詳細については、デメリットの項で後述しています。

なぜ不眠症にTMS治療が効果的なのか？

うつ病の治療として確立されたTMS治療ですが、不眠症にも高い効果が期待されています。

不眠症とは

不眠症とは、眠りたいという意思があるにも関わらず睡眠に問題を抱えていることです。
寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚めてしまう、朝早く目覚めてしまうなどの症状が続くことで、日中の眠気や注意散漫、食欲不振、疲労感などさまざまな不調を訴えます。
一時的な不眠は多くの人が体験するものですが、症状が1ヶ月以上続いて慢性化してしまった状態をとくに不眠症と呼んでいます。

こちらの記事では、不眠になってしまう原因について詳しく解説しています。あわせてぜひご覧ください。
不眠の原因はさまざま！　対策をして睡眠の質を高めよう

TMS治療による不眠症へのエビデンス

2020年11月26日に公立京都国際会館にて開催されたアドバンスド・レクチャーで、野田賀大氏は「不眠症に対するTMS治療研究」について、以下のように発表しています。

• 右低頻度刺激にて皮質抑制効果が期待できる
• 日を追うごとにプラセボ効果が高まる
• 30日以上継続しないと効果が期待できない

今回の研究で、原因のはっきりしない原発性不眠症おいては心理的な影響も大きい一方で、右低頻度刺激を30日以上継続して行うことで、プラセボと比較して明らかな症状改善が期待できるということが分かりました。

TMS治療のメリット

TMS治療が注目を集めている理由は、従来の治療法にはないメリットがあるからです。
どのようなメリットがあるのか、具体的に見ていきましょう。

投薬を減らせる

TMS治療の最大のメリットは、薬の量を大幅に減らせるということです。
一般的に、精神科や心療内科では他の科に比べて薬の処方が多く、依存性が高いとされています。
患者さん自身も「薬を止めると調子が悪くなる」「離脱症状が怖くてやめられない」と自覚している方が多く、減薬が難しいのが実情です。

しかし、TMS治療を併用することで、身体の調子を維持しながら減薬につなげることができます。
今後、TMS治療は「薬を減らしたいけど不安」という方にとって選択肢の1つとなるでしょう。

安全性が高い

TMS治療が注目されている理由の1つに、安全性の高さがあります。
「脳に電気刺激を与える」と聞くと少し怖いイメージを持つかもしれませんが、痛みの強さは個人に合わせて調節されるため、痛みを感じることはほとんどありません。
また、薬物療法における副作用や、従来の電気けいれん療法で大きなデメリットであった健忘症状がないことからも、治療リスクが非常に少ないことが分かります。

治療時間が短い

治療を受ける病院やクリニックによっても異なりますが、TMS治療は1回20〜40分程度、平均して30分程度で終了となるのが一般的です。
治療に際して麻酔などの前処置がなく、リクライニングチェアなどに座ってリラックスした状態で行われるため、眠っている間に治療が終わっていたという患者さんもいます。

副作用が少ない

TMS治療は薬を使わない分、副作用が少ないのもポイントです。
うつ病や不眠症などにおける薬物治療では、頭痛や吐き気、食欲不振、体重増加などさまざまな副作用が出る可能性があり、一方で離脱症状の恐れがあることから一気に投薬を止めることも難しくなります。

しかし、TMS治療の主な副作用は治療中に生じる軽度の頭皮痛や頭痛、不快感とされており、日常生活に支障が出ることはほとんどありません。
最も大きな副作用としてけいれんが生じることがありますが、その確率は30回のセッションを受けた場合でも0.1%未満とされており、開始前にリスクの有無を確認することができるため、安心して治療に臨むことができます。

TMS治療のデメリット

TMS治療にはメリットがある反面、知っておくべきデメリットもあります。

副作用がないわけではない

TMS治療は副作用が少ないことがメリットですが「全くない」というわけではなく、治療終了後に軽度の頭痛や耳鳴り、吐き気などを訴える方もいます。
一方で違和感や痛みで耐えられないという方もいますが、初めての治療で不安や恐怖が大きく、心理的な側面から刺激が強いと感じているケースも多く、ほとんどの方が数回治療を行うことで慣れて痛みを感じなくなります。

保険適用のハードルが高い

TMS治療を保険診療で受ける場合、以下の条件を全て満たしている必要があります。

• 成人であること
• うつ病の診断がついていること
• 過去にうつ病の薬物治療を受けたことがあること
• 2ヵ月以上入院可能であること
• 決められた機器とプロトコルに従うこと

前提として、TMS治療の適用は「18歳以上でうつ病と診断されていること」が前提であり、条件を満たしていても希死念慮を伴う重症患者などは保険適用外とされています。
また、あくまでも「抗うつ剤で改善が見られない場合に採用する」という位置づけであるため、薬物治療を行っても十分な効果が得られなかったケースに限定されます。
保険診療におけるTMS治療は6週間以内に30回というプロトコルが決められているため、待機期間も含め治療のために2ヵ月以上の時間を確保できる人という規定もあり、これら全ての条件を満たすのは難しいとされています。

診療できる医院が少ない

研究が進んでいる海外では、TMS治療は一般的な治療として広く浸透していますが、日本では今だ知名度が低く、治療を行える機関が少ないのが現状です。
また、専門知識を持つ医師も非常に少なく、TMS治療ができる病院やクリニックが首都圏に集中しているというのもデメリットといえるでしょう。

赤羽すずらんメンタルクリニックでは、不眠症の方にむけたTMS治療を行っています。

詳細はこちらをご覧ください。

不眠症の中でもこんな人はTMS治療がおすすめ

不眠症にも効果が期待できるTMS治療ですが、以下にあてはまる方にはとくにおすすめです。

睡眠薬への依存が怖い、薬を減らしたい方

睡眠導入薬や睡眠改善薬など、不眠症で処方される薬は依存性が高く「止められない」と悩んでいる方も多いでしょう。
また突然薬を止めてしまうと、強い不安のせいで服用前よりも不眠症状が出る可能性があります。
薬と併用しながら徐々に減薬したいという方は、一度TMS治療を検討してみることをおすすめします。

薬の効果が薄い方

睡眠薬を服用しても、効果が感じられないという方にもTMS治療がおすすめです。
このまま服用を続けても効果が得られないばかりか、副作用が生じるリスクは高くなります。
それを考えると、副作用が少ないTMS治療に移行した方が心身ともに安定した状態で治療に臨めるはずです。

TMS治療は不眠症状や治療に悩んでいる方におすすめ

TMS治療の概要やメリット・デメリット、不眠症への適応などについて解説しました。
TMS治療は従来の薬物治療や電気けいれん療法に代わり、高い効果が期待されている新しい治療法です。
これまで患者さんを苦しめてきた副作用や離脱症状がほとんどない、痛みがなく安全性が高いなど、多くのメリットがあります。

未だ診療できる医療機関は多くありませんが、今後はより多くの患者さんが治療を受けやすい環境が整っていくことでしょう。
不眠症状や今の治療に悩んでいる方は、一度TMS治療を検討してみてはいかがでしょうか。

不眠症のTMS治療は赤羽すずらんメンタルクリニック

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