TMS治療とは?効果や安全性について解説
年々増加傾向にあるうつ病。
100人のうち約6人がうつ病を発症した経験があるというデータもあるほど、日本では深刻な問題になっています。
仕事の人間関係や育児のストレスを抱えているうちに、いつのまにかうつ病になってしまった方も多いはず。
症状を改善させるために薬を飲んでも、なかなか良くならず副作用に悩まされることも少なくありません。
そんなうつ病の治療法として、今注目されているのが副作用がほとんどないとされているTMS治療です。
この記事では、元気な自分を取り戻したい、薬には頼りたくないと思っている方に向けて、TMS治療の効果と安全性について解説していきます。
目次
1.TMS治療(磁気治療)とは2.TMS治療は保険適用
3.TMS治療のメカニズム
4.TMS治療の頻度と期間
5.TMS治療の効果
6.TMS治療の安全性
7.TMS治療とは、うつ病に悩む方の希望の光
TMS治療(磁気治療)とは
TMS治療とは、薬に頼らず磁気を使用してうつ病を改善する、今までなかった副作用が少ない治療法です。
アメリカでは10年以上も前から承認されており、うつ病の治療法として海外では主流となっています。
「repetitive Transcranial Magnetic Stimulation」の頭文字をとったTMS治療は、「磁気刺激治療」や「経頭蓋磁気刺激法」とも呼ばれます。
うつ病は精神の病気だと以前は考えられていましたが、現在は医学の進歩により、脳の病気であると考えるのが一般的になりました。
TMS治療は、喜怒哀楽の感情や判断をつかさどる背外側前頭前野を磁気で刺激し、脳の血流改善を促します。
頭部を傷つけることなく、原因となる脳にアプローチできるのが特徴です。うつ病の症状だけでなく、精神疾患や神経内科疾患、発達障害にも効果が期待できるとされています。
吐き気、体重増加、不眠といった副作用がある薬物治療では、改善がみられない、服用を避けたい方にはおすすめの治療法といえます。
まだ日本では、TMS治療ができる医療機関が少ないのが現状です。
TMS治療は保険適用
日本では2019年に保険適用となりました。
しかし、TMS治療を正しく行える医師や病院が少ないことから、全てのうつ病患者に適用はされず、現在の対象は、以下の条件に当てはまった場合のみとなっています。
- 抗うつ剤の使用経験があるが効果が得られず、難治性のうつ病によりTMS治療が必要だと医師が判断した場合
医療機関の紹介状があるか、入院ができるかどうかも関わってくるため、TMS治療の保険適用を受けるのは、狭き門だと認識したほうが無難です。
TMS治療を受けたくても受けられない方が多くいる、と言っても過言ではありません。
また、保険が適用されない場合でも、TMS治療は医療費控除の対象になります。
診察代、治療費、検査料のほか、通院にかかった電車・バスの公共交通機関も申請が可能です。確定申告の際に必要になるので、領収書はしっかり保管しておくようにしましょう。
こちらの記事では、TMS治療の「保険診療」と「自由診療」の違いや特徴について詳しく解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
TMS治療の保険診療と自由診療の違いとは?費用や特徴について解説
TMS治療の適応症
TMS治療の適応症はうつ病だけでなく、幅広い精神疾患、発達障害を含みます。
以下に見やすくリストアップしたので確認してください。
TMS治療のメカニズム
TMS治療は、8の字の特殊なコイルを前頭部に当て、磁気による刺激を脳内に与えます。
刺激を受けた脳内の血流と神経は、回数を重ねていくうちに機能が正常化されます。
判断力や集中力が高まり、強い不安感に襲われることがなくなり、うつ病の治療効果を期待できます。
気分の浮き沈みに関わっている脳内の扁桃体や、脳の司令塔ともいえる、判断や記憶の役割がある前頭前野に直接刺激を与えることができるのが特徴です。
難しい脳手術を行わずに脳内の血流機能を高める治療が可能なので、体への負担も少ないのがメリットです。
TMS治療の頻度と期間
TMS治療は、日本では1週間に1回〜3回程度が一般的な頻度です。
海外のTMS治療では、1週間に5回ほど行う事例もあるようですが、日本では治療頻度が少なくても効果が得られるように、刺激方法を工夫しています。
TMS治療法は1回で効果が得られるものではなく、回数が必要です。
そのため、治療期間は個人差もありますが3〜6週間程度かかります。
TMS治療を続けると、うつ病の再発を防止する効果も期待できます。
TMS治療の効果
TMS治療の効果は、良くなったり悪くなったりを繰り返しながら少しずつ、症状が改善されていきます。
変化がいつ現れるのか焦る必要はありません。環境やストレス度合いによっても治療効果は変わります。
治療開始から10回程度は、脳の血流がしっかり安定しないため、頻回に治療を受けると良いとされています。
改善が見られるようになるのは、治療を始めてから10回ほど経過した頃の場合が多いようです。
いつの間にか気分の落ち込みが無くなったり、家族から変わったと言われたりして、効果を実感する方もいます。
少し改善したからといって治療をやめてしまうと症状が戻ってしまうため、しっかり治療を継続することが大切です。治療の目安は20〜30回程度と言われています。また、再発防止のために治療の継続を検討するのも良いでしょう。
主なTMS治療の効果は以下の通りです。
- 夜ぐっすり眠れるようになる
- 食欲の回復
- 物事の決定や判断ができるようになる
- 不安感の改善
- 意欲が湧く
- 仕事に支障が出なくなる
- ひどく落ち込むことがなくなる
TMS治療の安全性
ここまで、TMS治療のメカニズムやその効果を解説してきましたが、気になるのはその安全性ですよね。
そこで、ここからはTMS治療の安全性について、副作用を含めた以下3つの観点から見ていきましょう。
- 副作用
- 絶対禁忌
- 相対禁忌
それぞれ解説していきます。
【安全性1】副作用
TMS治療の副作用は、治療中の磁気刺激による痛みや不快感がありますが、治療後には解消することがほとんどです。
治療中はリクライニングチェアに身を委ね、リラックスした状態で受けられます。
頭部を傷つける必要がなく、薬物療法や麻酔が必須の電気けいれん療法と比べても、治療のリスクはとても少ないことが分かります。
薬物療法で見られる体重減少や血圧の変化、自殺願望、不眠といった副作用は、TMS治療にはほとんどありません。
そのため安全性も高いのが特徴です。
【安全性2】絶対禁忌
TMS治療には、絶対禁忌とされている以下の項目があります。
- 磁性体クリップ
- 人工内耳
- 心臓にペースメーカーが入っている
上記に当てはまる場合は、磁気の影響を受けやすいために治療は受けられません。
【安全性3】相対禁忌
TMS治療の相対禁忌については、以下の通りです。
- 投薬ポンプ
- 義歯、インプラント
上記に当てはまる場合は、体内に入っている部位や、どんな素材のものを使用しているかで、治療の可否が決まります。
TMS治療を受ける際は必ず確認するようにしましょう。
TMS治療とは、うつ病に悩む方の希望の光
TMS治療は、うつ病に悩む方にとって希望の光とも言える治療法です。
以前のように元気で明るい自分を取り戻したい、薬を卒業したいと思っている方におすすめです。
リラックスした状態で治療を受けることができ、吐き気や食欲不振のような副作用もありません。
薬物療法の副作用に苦しむこともなく、麻酔を使用しないため体への負担も少なく済みます。赤ちゃんが欲しいと考えている方にも治療が可能です。
メリットが大きいTMS治療を、うつ病や精神疾患、発達障害に悩む多くの方が利用できるように、保険適用の条件の緩和が早急な課題でしょう。
当院は、駅から約1分で着く女性医師の心療内科です。
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